米国 Dell はかなり以前から株式の非公開化を望んでいた。

非公開化のメリットは明らかだ。数年先を睨んだ戦略的な運営が可能になるし、企業形態を自分達が予想する未来にあわせて再構築することもできるようになる。取るに足らないことで、金融アナリストから叩かれることもなくなるだろう。また、Dell のような大企業である場合、公開企業であることで発生するコストも馬鹿にはならない。非公開にすることで、そのコストがカットできるのだ。

だが Dell ほどの大企業となると、出資先を見つけるのが困難なのも確か。そこに登場したのが、Microsoft だった。

Microsoft は、投資資金を潤沢に保有している。Microsoft は、同社の技術が時代から取り残されてしまうことを恐れており、また Dell のような PC ベンダーが垂直統合モデルへと向かうことに警戒感を持っている。Microsoft は Dell に投資することで同社とより密接なパートナーシップを結び、これらの不安を緩和することができるのだ。

この取引にリスクが無いわけではないし、まだ正式に決定したわけでもない。だが、本当に Dell が非公開企業となり、Microsoft が資本参加すれば、その結果は非常に興味深いものとなるだろう。

問題点

この取引は、Microsoft と OEM パートナーとの関係性に影響を与えうる。HP、Lenovo、Acer、Asus、Samsung といった OEM 企業は、Microsoft が彼らの競合相手である Dell と接近することを嫌い、Microsoft 離れを引き起こすもしれない。

もし、これらの企業の多くが Google などへと乗り換えてしまったら、Microsft は Dell との取引で得るメリットをはるかに上回る損失を被ることになるだろう。

だが Google も、Sumsung などの競合であるハードウェアメーカー Motorola を買収している。また、パートナーとして見たとき、Google は Microsoft よりも組みにくい相手であることも知られている。現実的に考えれば、OEM 企業が Microsoft から Google に乗り換えるというのは、あまり良い方策とは言えないのだ。Microsoft が OEM パートナーを説得できれば、提携解消などということにはならないだろう。OEM 企業は、Microsoft との提携を維持するはずだ。しぶしぶながらではあるだろうが。

この取引を警戒すべきは Apple だ

今回の取引を大きなニュースにしているのは、Microsoft とその最大のパートナーの1つである Dell との関係性が変化するかもしれないという点だ。

良い方向に転がれば、ソフトウェアとハードウェアが一体化となった、より優れた製品が生み出される可能性がある。ソフトウェアがハードウェアの進化を取り入れ、ハードウェアがソフトウェアの進化を後押しする。これは10年近く Microsoft を停滞させてきた、Microsoft とパートナーとの間の大きなコミュニケーションギャップを埋めることになるかもしれない。

Dell との コミュニケーションにより Microsoft のソフトウェア性能が向上すれば、Dell 以外の OEM パートナーもその恩恵に預かることになる。一般消費者に向けたより魅力的な製品が登場してくる可能性は十分にあるだろう。

この取引は、Microsoft によるタブレット Surface にも影響を与えうる。Microsoft と Dell が組めば、Surface はよりパワフルになるだけでなく、ラインナップも充実するに違いない。

つまり、今回の取引を最も警戒すべきなのは Apple なのだ。

Rob Enderle
Rob Enderle
Rob Enderle は、Enderle Group の主席アナリスト。米国カリフォルニア州サンノゼ在住。Enderle Group 設立以前は、Forrester Research や Giga Information Group などで主要なポジションを歴任。シリコンバレーの大手 IT 企業に勤務した経験も持つ。

(この記事は、1月23日付けの記事の抄訳です)