世界的に急速な普及が進むスマートフォン市場には、アプリマーケットの登録における審査基準さえクリアすれば個人、法人問わずアプリのリリースが可能であるため、現在、国産海外産を問わず何十万という多種多様なアプリが存在する。そのため、デジタルマーケティングの世界においても新たなリーチとしてアプリ上への広告配信が注目されており、国内のアプリ市場に加えて海外向けアプリプロモーションの需要が高まっている。そこで、今回は海外スマートフォン向けアドネットワーク運用の成功ポイントについて解説する。

1)CPC 型アドネットワーク

アメリカを中心に日々スマートフォンアドネットワークのスタートアップが乱立しているが、大別してそれらは CPC(CostPerClick)型と CPI(CostPerInstall)型課金方式のアドネットワークに分類される。いずれの方式においても基本的に配信先は不明瞭であるため、配信のチューニングはアドネットワークによって行われるが、オークション形式で広告掲載が決定される CPC 型では入札単価調整、並びにバナー精査の2点が成果に大きく影響を及ぼす。入札単価については、アドネットワーク同士で掲載枠が重複しているケースがあるため、異なるアドネットワークから同一の掲載枠に対し入札をしている可能性を考慮しなければならない。当該ケースの場合、一方のアドネットワークの CPC がもう一方のアドネットワークの CPC を上回り、本来の広告掲載可能な CPC より高い CPC を課金されている可能性がある。

【例】
アドネットワーク A での掲載面 X の CPC は 0.07ドル
アドネットワーク B での掲載面 X の CPC は 0.09ドル

従って、キャンペーン開始前にアドネットワークに掲載枠の重複の有無を確認し、CPC が安価なアドネットワークで効率良く広告を掲載することが重要となる。また、フィルレート(既に広告が掲載されている枠/アドネットワークが保有する掲載枠)が低い国によっては広告掲載における競合率が低いと考えられる為、アドネットワークに対する CPC の最低価格交渉がしやすく比較的安価に広告出稿できる可能性があることも認識しておきたい。

一方、スマートフォン向けアプリのバナーについてはアプリ上に幾つも掲載されるのではなく、基本的に一枠の掲載枠にのみ配信され、eCPM(effective Cost Per Mill:広告1,000回表示またはアクセス1,000ページビューあたりの収益額)を基準にインプレッションがバナーへ割り当てられる掲載ロジックとなる。また、リスティング広告でいうところのスコアという概念が存在せず、いかにして優先的に広告を配信できるかが頭を悩ますところではあるため、アドネットワーク毎に eCPM の基準が異なることを念頭においておくといい。その理由として、バナー単体に対して eCPM を基準としているアドネットワークについては、eCPM の高いバナーの複製バナーを出稿することでインプレッションが増加する可能性があるからだ。

さらに、同一アカウント内においてもバナーの競合により eCPM が良いバナーが本来獲得するべきインプレッションを十分に獲得できていないケースもあるため、むやみに多数のバナーを出稿するのではなく、予め媒体社へバナーの推奨出稿本数、並びにバナーの競合の有無について仕様を確認するべきである。中にはキャンペーン単位で eCPM を評価している媒体も存在するため、バナー単体ではなくキャンペーン単位で eCPM を注視する必要性もある。

アドネットワークへ掲載枠を提供するパブリッシャーは売上が CTR(Click Through Rate)の善し悪しで左右される CPC 型よりも、CTR に左右されず安定して売上が見込める CPM 型を選択しているケースがあるため、各アドネットワークへ CPM 配信の優位性を事前にヒアリングしておくこともポイントである。特に、欧米諸国におけるサンクスギビングやクリスマスシーズン等はパフォーマンス系の広告主よりもブランド系の広告主が台頭することにより、CPM 配信が優先され CPC 配信でのインプレッションが発生しづらくなることもある。

2)CPI 型アドネットワーク


次いで、CPI 型ではオファーウォール形式のインセンティブ広告と CPC 型広告と同一の掲載枠に掲載されるノンインセンティブ形式が存在する。前者は、ユーザーへ仮想通貨等のインセンティブを付与する代わりにインストールを促す広告である。そのため、アプリそのものの使用に対するユーザーモチベーションは低いが、短期でのインストール数積み上げが可能であり、アプリマーケットの順位上昇施策に活用される傾向がある。また、オファーウォールの上位に広告を掲載するため、キャンペーン初動時より CPI の設定を高めに設定するケースが多く見られるが、1日単位で徐々に CPI を上方調整することも1つの施策である。通常オファーウォールにはユーザーが一度でもインストールしたアプリは掲載されない仕様になっている。普段からオファーウォール経由でアプリをインストールするユーザーのオファーウォール上は上位掲載に必要な CPI 設定がされてなくても、下位に掲載されているはずのアプリが自然と上位に押し出されていることが多い。

【例】
ユーザー A のオファーウォール上ではアプリ A(CPI:0.80ドル)は8位に掲載
ユーザー B(普段からオファーウォール経由でアプリをインストールするユーザー)のオファーウォール上ではアプリ A(CPI:0.80ドル)は2位に掲載

上記のようなケースが往々にして発生するため、初動にかけては想定より安価な CPI 設定で運用したほうが効率的な運用が可能となる。

後者のノンインセンティブ広告では、CPC 型広告と掲載枠を競いあっており、基本的にアドネットワークはパブリッシャーに対し CPM でインプレッションを購入し設定された CPI に見合う掲載枠以外を除外する形で運用を行っていく。そのため、成果次第ではアドネットワーク側にもリスクが生じ、日次でインストール数の増減が大きく変動する場合が多く、試算の算出が困難となる可能性がある。アドネットワークにとっても成果が創出され易いパブリッシャーを発掘する必要性があるため、低予算で開始するのではなく、安定的にインストール数を獲得するために必要な予算を予め媒体へヒアリングし、出稿の意思決定を行うことが重要である。

日進月歩するスマートフォン市場では、海外スマートフォン向けアドネットワークは細かな広告メニューを含めると多岐に渡り、さらにこの先も多様化が予測されるが、基本的には上述の通り CPC 型、CPI 型広告に分類される。それぞれのメリット、デメリットを事前に把握した上で、綿密な運用を設計し、費用化効果の高い広告成果向上に役立てていただきたい。

執筆:株式会社アイレップ 海外メディアマネジメントチーム 黒木壮太
記事提供:アイレップ