盛大、暢遊、智明星通(elex)、完美世界、空中網…。こうした名前は日本には馴染みが少ないものの、中国のオンラインゲーム市場では実績を作りあげてきた代表的な企業の一部です。中国のインターネット・モバイル市場は、もうこのコラムを読まれている方にとっては十分にご存じのとおり、その人口と共に市場規模全体が拡大を続けており、日本のように頭打ちの状況とは異なります。

中国最大級のゲームショウ「China joy」の様子
中国最大級のゲームショウ「China joy」の様子

ただ、こうした中国の企業においても、中国国内で作り上げてきたゲームの運営実績と稼ぎ出した収益をもとに、新たな市場に打って出たいという意欲を持つ企業は少なくありません。その中でも、地理的にも近く、かつ課金率や ARPU・ARPPU の高さが話題性をもって伝えられる日本市場は関心の一つのようです。

実際、中国国内のオンラインゲーム企業と意見交換を行うと、米国や欧州の市場と共に日本市場への参入機会を窺う企業に多く出会います。体力をつけてきた中国のオンラインゲーム企業は、次なる一手の可能性として日本をどう見ているのか。本腰を入れて日本市場に参入しようとする企業は今後増えてくるのか。本稿はここに焦点を当てることにします。

Rekoo のサンシャイン牧場のように日本で成功したソーシャルゲームのタイトルを持つ中国企業は珍しく、この数年のあいだにもステルスで(参入を公表せず)日本市場に入ったものの結果がでず、すっといつの間にか撤退したところも存在します。ゲームの好みや品質、ストーリー性といった点だけでなく、商習慣や言葉という根本的な部分で躓くケースも見かけられます。日本企業が中国に進出する際にうまくいかないことがあるのと同様、その逆もまた存在するわけです。ただ、様々な中国のオンラインゲーム企業の海外事業担当者に話を聞くと、まず彼らの関心を集めているのは日本の娯楽市場の規模、そしてソーシャルゲームの課金率や課金額の高さです。

中国のオンラインゲーム市場の課金率は、ソースの信頼性が乏しく、今のところかなりのブレ幅で推量する必要がありますが、少なくとも日本市場を大きく下回っていることは間違いなさそうです。この一つの根拠は、スマートフォン向けのアプリの課金率の差にあります。アプリストアの調査・分析を行う DISTIMO  は、日本と中国には6倍程度の差があるとしています(Asian Market Characteristics, 2011)。これを裏付ける話として非公式ですが、ゲームによっては課金率が0.5〜2パーセントという低い数値のタイトルも多いと聞かれます。ただ、小さく集めても絶対量がある中国では、ARPPU が低い地方在中のユーザーが、オンラインゲーム企業の収益基盤になりつつあります。

なお筆者は、表面的な指標だけで日本市場を魅力的に捉えるべきではないと中国企業に説明します。

例えば、ゲームのデバッグにかけるコスト。日本のゲームは、ストーリー・ゲーム性やイラスト・音楽だけでなく、ゲーム自体もクオリティが高いです。一方、中国ではデバッグ不足でバグだらけのオンラインゲームがリリースされたり、いきなり持っていたアイテムがリセットされたりすることも少なくありません。突然ゲームのストーリーの順序や内容が大きく変わることもあります。日本のユーザーはとても細かいところに目が向くため、中国のオンラインゲーム企業がそのままの品質管理で日本に来ても受け容れられないだろう、とも考えられます。またマーケティングの手法やコストのかけ方も違います。

こうしたことを一つずつ中国の企業が理解・習得するには、適切なパートナーが日本にいるか、日本のオンラインゲーム業界に精通する人を雇用しなければ、そもそも土俵にものぼることができないでしょう。

ところが2012年の後半に入ったあたりから、こうしたハードルがあることを理解した上で、中国国外に新たな市場を求めるオンラインゲーム企業が増えています。国内の様々な経営許可証の縛り、アプリ配信時に課されるキャリアへの高い手数料、Google Play の課金非対応、そしてモバイルインフラの整備状況など、根本的な市場環境の自由度の違いは明るく映るようです。

様々な日中の環境の違いを時間と可能性をお金で買う、即ち M&A という方法に出てくる可能性もあり得るでしょう。財務的な基盤を持ちつつある中国のゲーム企業は、次の一手をどこに打つのか。「人民元」の向き先が注目されています。

執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎
記事提供:株式会社クララオンライン