エンジニアは“求人マーケット”を注視すべし―リブセンス取締役桂大介のキャリア論(2)

第1回のつづき

リブセンスの創業メンバーであり、メディアにはほとんど出ないという桂大介氏のキャリア観に迫るインタビュー。今の自分を拾ってくれる会社が5社あるかどうかで、エンジニアの人生の質は変わると語る桂氏。企業に求められるエンジニアを目指す上で、さまざまな会社の“求人”をチェックすることが重要だという。

■“求人マーケット”をみて、“売れる技術”を読み解く

―エンジニアにとって理想的なのは「いつでも転職できる状態」だと仰いましたが、そのためには、どんなことを意識すべきでしょうか?

たとえば“求人マーケット”とかでしょうか。自分が好きな技術ばかりやっていてもダメなので。今どういう技術が求められていて、どういう技術が次にくるか、トレンドを掴んで学んでいくことは大切だと思います。

―なるほど、技術トレンドは“求人マーケット”に現れると。

そういう一面もあると思います。いくら先鋭的な技術でも「求人」として出てこなければ意味がないですから。もちろん僕もエンジニアなので面白いことに興味は惹かれますけど、それで食べていけるかというのはまた別の話で。

―転職するにしても、どんな会社でもいいというわけではないですよね?エンジニアにとって良い会社とは?

若手の場合だと、とにかく教育体制がしっかりしているところでしょう。あるいはエンジニアの平均レベルが高いところ。教育面が未整備でも、周りに引っ張られて育っていきますから。逆にレベルが高い人であれば、自分の得意領域を使えるところであったり、裁量が与えられるところであったり。

エンジニアってある程度技術がついてくると、会社の倒産はリスクにならないと思うんです。だから裁量とか面白さとか、純粋にそこで選んだほうがいいかもしれないですね。

―やっぱりポイントは“自分がどうしたいか”?

そうですね。それと、その選択がどれだけ“お金”になるのかでしょうか。

―どれだけお金になるかは、求人マーケットを見れば分かるということですね。

GREE、DeNA、Twitter、Facebook、Google…その求人をパッと見てどういうスキルが求められているか見てみたり。逆に海外でホットなものが1年後くらいに日本に入ってくると思うので、そこから逆算するのもいいと思います。

■本気で転職しようとすることで、初めて見えてくるもの

―今、エンジニアはどういう方向を目指していくべきなのでしょうか。桂さんご自身はバリバリのエンジニアというよりは、ビジネスプロデューサー的なキャリアを歩んでいらっしゃるわけですが、そのキャリアについてご自身ではどう感じていらっしゃいますか?

僕は結果的にこういうキャリアになりましたが、今ゼロからキャリアを積むなら、まずはエンジニアとして力をつけますね。ビジネスプロデューサーになっていくのは、エンジニアとしてしっかり力をつけてからのほうが良いと思います。

―それはなぜでしょうか?

中途半端に知識をつけても、あまりプラスにならない気がします。「これ簡単にできるでしょ?」みたいなことを言うようになると一番危なくて。エンジニアからある程度リスペクトされるレベルのスキルを持った上でやるか、それでなければ「技術は全くわからないから、エンジニアと二人三脚でやっていこう」ってほうが上手くいく気がします。

―自分を客観視できていないと勘違いすることも出てきそうですね…。いま自分がマーケットの中でどの位置にいるのか、正しく見極めるためにはどんなことを意識すべきなのでしょう?

「目線をどこに置くか」というのは一つ大事なことかもしれません。一例ですけど、「Google を目指しています」という人は必然的に目線が高くなって、見えるものも違ってくると思うんです。逆説的ですけど、ある程度上のレベルの会社を目指すようにして、その会社が求めているレベルを知ることが重要なのかもしれないですね。

本気で転職しようとすることで、初めて見えてくるもの

― 一度本気で転職を考えてみるというのは、キャリアを考える上ですごく有効なのかもしれませんね。

そうそう、それでショックを受けたりして(笑)。

転職をするにしろしないにしろ、会社から出て転職したり独立できるだけの能力を身につけることを、自分のキャリアのマイルストーンに置くことはすごく重要だと思います。

たとえば求人マーケットを見て、どんなエンジニアが求められているのかをウォッチしておくとか。自分を売り物として捉えた時の、“マーケットセンス”みたいなのは大事ですよね。

もちろんマーケットに100%合わせる必要はないですけど、食べていくためには必要なことですので。押さえるべきところは押さえておいて、その上で他の得意分野を伸ばすとか、自分の好きなことをやるのがいいと思います。

―「バランス感覚」ですかね。マーケットに合わせることを念頭に置きつつ、自分の好みや願望も無視することなく、その両方の間での落ち着きどころを探る。

“マーケットの需要”と“自分とのフィット感”とが交わるところを探る感覚ですね。

■エンジニアにとって“起業”という選択肢はアリなのか?

―桂さんはもともと起業志向だったんですか?

いや、あんまり考えたことなかったですね。高校時代に個人事業主になったのも、バイトの延長みたいなもので。高校生になるとみんなバイト始めるじゃないですか。でもプログラミングできるんだったらそっちのほうが稼げるんじゃないかと思って。個人事業主にしたのも別にいつか独立しようと思っていたわけではなく、単純に税金とかの関係で登録しておいたほうがいいからって(笑)。

―桂さんにとって、村上さんとの出会いはやっぱり大きいですか?

結果的には、大きいですよね。

―もともと起業志向ではなかったと仰ったので、そうすると、エンジニアにとって、起業家タイプの方と出会うことで開ける道があるのかなと。

僕の場合は個人事業主として独立した経験があったので、“起業”に対してあまり抵抗はありませんでした。面白いことに、当社の初期メンバーのほとんどは、親が「経営者」なんです。村上はサラリーマン家庭なんですが、祖父がどちらも経営者ですし。つまり“起業”は、僕らにとってあたり前の選択肢の一つだったんです。

起業ってちょっと特別視されすぎてる気がするんですよね。

―もっと多くの人が、起業という選択肢を考えてみるべきだと?

いや、僕は起業に対しては反対派です(笑)。しなくていいならしなくていいと思いますよ。一部のやりたいことを成し遂げるために起業せざるを得ない人たちがしてるだけなので…。

―やっぱり、それだけ大変だから?

それもそうですし、「仕事でそんなに人生とられていいの?」って思います。みんなもっと大事にしたいことがあるんじゃないのかなって。

―桂さん自身は何かを犠牲にしているという感覚がありますか?

それを犠牲だと思わない人だったら起業してもいいんでしょうね。でも、そういう人間って本当に少ないと思います。

―なるほど。ほとんどの人は企業で働く道を選んだほうがいいし、企業で働くにしても「いつでも転職できる状態」であるべきだと。そして今の自分の価値を客観的に掴むために、“求人マーケット”をチェックするというのは、すごく具体的な方法論でとても参考になるお話でした。本日はありがとうございました!

エンジニアにとって“起業”という選択肢はアリなのか?

(おわり)

記事提供:CAREER HACK