2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。死者・行方不明者は約1万9,000人、避難者数は約34万にのぼった。地震の規模としては、マグニチュード9.0と日本周辺では観測史上最大であった。震災から1年9か月が経過した現地の状況と今後の展望について、就労の観点から考えてみたいと思う。

■ まだまだ復興段階の東北地方

震災から約1年9か月が経過して、被災地はガレキ撤去や道路整備などは進みつつも今後の就労機会などは根本的な解決が出来ていない状況である。宮城県では、県や市が主体となって「震災復興計画」が平成23年から32年まで10か年計画で進められているが、東北地方ではまだ今後に不安を抱えている人たちも少なくない。実際に被災地域で話を聞くと、将来の不安の中でもとりわけ「働く機会」を挙げるケースが多い。

震災以来、失業保険の給付期間延長などの特例措置が行われているが、これらの制度は一時的なものがほとんどで、特例措置終了後への不安が絶えず付きまとう。また、東北地方では漁業などの一次産業が盛んであったが、今回の震災による津波の影響で沿岸地域は壊滅的なダメージを受け、多くの方々が職を失ってしまった。

ひとつ顕著なデータを紹介しよう。厚生労働省が発表している2011年の6月の被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の雇用状況によると、被災者向け有効求人数が全国で4万1,668人分に対して、被災者有効求職者数は4万457人と約1.0倍となっている。しかしその求人数のうち、被災3県内での求人数は4,369人分と全体の約10%しかない。残り90%は、転移を伴う求人であり、東北地方で就業を求めている方に取っては狭き門となっているのが現状である。そこで脚光を浴びる可能性があるのが、インターネットを利用した「クラウドソーシング」という新しい在宅ワークだ。

■ クラウドソーシングという新しい在宅ワークの形

インターネットとパソコンがあれば、どこでも雇用機会を生み出すことができるクラウドソーシングは、2007年頃からアメリカを中心に盛んになった。日本でも現在、幾つかのプラットフォームが立ち上がっており、仕事の受発注数は増加傾向にある。

震災被害者の中には、子どもと離れたくないために勤め先を退職し、家庭にこもる主婦なども増えていた。クラウドソーシングを活用した在宅ワークは、こういった家にいなければならない主婦にも、就労機会を提供することが可能になる。

ではここで、被災地域におけるクラウドソーシングの事例を取り上げてみる。

■ 「テレワーク1000プロジェクト」

テレワーク1000プロジェクト」は、先に上げた就業のミスマッチを解消すべく、国が推奨しているテレワーク(在宅ワーク)の普及を東北地方で行っている。このプロジェクトでは、マッチングサイトやマイクロタスクでのクラウドソーシングを紹介。また、直接雇用を求めている方々に対しては、在宅ワーカーでの直接雇用などを紹介している。2011年8月から活動を開始し、現在は1,086人が登録している(2012年11月21日現在)。また、実際に提供された就業機会は1,212件にのぼる(2012年11月30日現在)。

テレワーク1000プロジェクトの Web サイト
テレワーク1000プロジェクトの Web サイト

■ 「一般社団法人 SAVE TAKATA」


津波で甚大な被害を被った岩手県陸前高田市で活動をしている一般社団法人SAVE TAKATA では、多数の復興プロジェクトを手がける中で「東北 UP プロジェクト」と題した在宅ワーカー支援を行っている。このプロジェクトは日本マイクロソフト株式会社 NPO 法人育て上げネットや、被災地 NPO が協力して行っており、IT スキルのない方でも今後クラウドソーシングを利用してもらえるようにパソコン教室を開催。そして、各自の IT スキルを向上させた後に在宅ワークを行うための教育から就業までを支援している。

一般社団法人 SAVE TAKATA の Web サイト
一般社団法人 SAVE TAKATA の Web サイト

※これらのプロジェクトでは定期的に説明会やセミナーを行っている。年内実施予定の説明会スケジュールは以下のとおり。

・テレワーク1000
12月20日 14:00〜16:00
宮城県石巻市(石巻市河北総合センター ビックバン:石巻市成田字小塚裏畑54)

・SAVE TAKATA
12月15日 14:00〜16:00
岩手県陸前高田市(なつかしい未来創造株式会社 事務所内:岩手県陸前高田市竹駒町字相川74-1)

被災地域では、就労機会の拡充以外にも多くの課題が残っている。例えば、仮設住宅では様々な地域から被災者が集まって生活をしているため、これまでのコミュニティでの生活習慣の違いなどから、うまくとけ込めずに孤立してしまっている人たちもいる。クラウドソーシングは就労機会の提供を通じ、地域社会のコミュニティづくりに関しても新しいコミュニケーション環境を創出するなど良い影響をもたらす可能性も秘めている。

震災復興における就業機会の提供は重要な課題である。そして、対策には多大な時間や設備を要することは否めない。そのような中で、インターネットとパソコンがあれば就業機会を提供できるクラウドソーシングという在宅ワークの形は、これからを担う新しい就労インフラとして貢献することが期待される。

執筆:株式会社リアルワールド 仙台支局 局長 山重卓也
記事提供: リアルワールド