今の自分を拾ってくれる会社が5社あるか?―リブセンス取締役 桂大介のキャリア論(1)

“史上最年少での東証一部上場”で話題のリブセンス。その創業メンバーの一人取締役の桂大介氏にエンジニアのキャリアについて話を伺った。エンジニアにとって“いつでも転職できる状態”こそが理想だと語る桂氏。メディアにほとんど出ないという桂氏の考えに迫る、貴重なインタビュー。

■メディアで初めて語られる、リブセンス取締役の頭の中

「いま面白いエンジニアといえば、リブセンスの桂さん」

そんな声を頻繁に耳にするものの、いくらググっても桂さん本人の露出は極端に少ない。いくつかの講演情報と、リブセンスの株主欄に、その名前を見ることができるくらいだ。今回、その桂さんに直接お話を伺う機会に恵まれた。

リブセンスといえば、村上社長の“史上最年少の東証一部上場”が話題になったが、創業メンバーである桂さんの経歴も興味深い。

中学時代からプログラミングに親しみ、高校時代には“個人事業主”として独立。周りの友人が普通にアルバイトをする中、ホームページの受託制作などで稼いでいたという。

そして2006年、大学時代に仲間とともにリブセンスを創業。取締役として、今や東証一部上場企業の経営を担っているというわけだ。

まさにエンジニアとしてのサクセスストーリーを駆け上がってきたかに見える桂さんは、果たしてエンジニアのキャリアをどのように捉えているのだろうか?そして、27歳の桂さん自身は、これからの自分の進むべき道をどう見据えているのだろうか?

■優秀なエンジニア=自分の年収を上げられるエンジニア


―早速ですが、桂さんはどんなエンジニアが優秀だと思いますか?

難しいですね…。やっぱり会社のフェーズによって全く違ってくるとは思うので。ただ優秀なエンジニアを「年収を上げられるエンジニア」と言い換えると、総論的に言えば「自分の得意領域が活かせる環境を選べる人」だと思います。

例えばスタートアップだったら、わりと横断的なスキルが必要で、とりあえず手を動かして実装して、ダメだったら直して…って PDCA を自分で回せる人が求められます。大企業の場合は、調整力のある人のほうが活躍できたりしますよね。

経営が分かる、DB もフロントも出来る、スマホ開発が出来る…どのキャリアがベストかという議論に正解はないんだと思います。もちろんそれなりのトレンドはあるんでしょうけど、どちらかと言えば「今の自分のスキルセットで自身のバリューを最大化させるために、きちんと会社を選ぶこと」のほうが重要なんじゃないかと。

―なるほど、自分のウリが分かっている人。

そうですね。あくまで「年収を上げられる人」という視点での話ですが。

―能力・スキルといった観点でいくとどうでしょう?

これは人それぞれ価値観が違うので断定はできませんが、単純に仕事の優先順位が高い人のほうが伸びやすいとは思います。やっぱり、起業志望の人間は伸びやすいですよね。起業志望の人は、仕事のプライオリティが人生の中でも特に高い。そうすると仕事に対する意識やスキルに対する考え方も変わってくるので、自ずと伸び方も違ってきますよね。

別に起業志望じゃなくてもいいんですけど、プログラミングというものが自分の人生の中でどれくらいの大きさを占めているか。大きければ大きいほど優秀な人材になりやすい気がします。一つの目安として、やっぱり「休日もプログラミングしてます」っていうタイプの人は伸びやすい印象です。

■目指すべきは、「きちんと転職できるエンジニア」

―今ってとにかく変化のスピードがはやく、先が読みづらい世の中になっていますよね。そんな中で、エンジニアはどういうキャリアを歩んでいくべきなのでしょうか?

当社でも新卒のエンジニアを採用してイチから教えこんでいくんですけど、その際の目標としているのは「きちんと転職できるエンジニアになること」なんです。

たまに中途採用で履歴書を拝見すると、自社で作った言語しかできません、という方もいます。今はもうほとんど使われていない技術の専門家とか。そうなるとやっぱり大変ですよね。

目指すべきは、「きちんと転職できるエンジニア」

でも一方で、新しいものにバンバン取り組んでいればいいのかというと、そういうわけでもない。新しすぎて世の中で需要がなければ、結局それも転職はできないわけですから。

そういう意味でも「転職できるかどうか」ということを主眼に置いてやっていくのは、一つの手法としてアリなんじゃないかと思います。その中でコンサバティブにいくのであれば、いま広く使われている技術を学んだり、もっとリスクを取るのであれば、これから来るであろう分野を学んだり…。

スタジオ・ジブリで宮崎駿さんがアニメーターを教育するときに、「ジブリでしか通用しない人間になるな。」って言うらしいんですが、それはすごく正しい態度だと思うんです。

例えば自分の会社がツブれましたというときに、「この5社くらいは拾ってくれるだろう」っていうところがあるのとないのとでは、その人の人生の質って変わると思うんですよね。勤め先との関係でみても、どうしても我慢出来ないことがあったとしても、会社に擦り寄る必要はなくなりますし。

“ぶら下がり人材”とかいろんな企業で問題になっていますけど、そういう人って会社にとっても負債化するし、本人からしても面白くないし、お互いツラくなるだけですよね。だから重要なのは、会社側からしたら「いかに転職できる人材に育てるか」であり、その人からしたら「いかに転職できる人材になるか」だと思います。

今いる会社がいくら好きだとしても、この先どうなるかは全く分かりません。常にそこを視野に入れて、転職や独立ができる人材になっていないと、とは思いますね。

―なるほど…。たしかに「いつでも転職できるかどうか」というのは、その人の能力をはかる一つの目安になりそうですね。

その話を自社採用で言いまくっていたら、「御社は社員に長く働いてほしくないんですか…?」って言われたこともありました(笑)。そういうわけじゃないんですけどね。結果的に同じ会社で働き続けたっていいわけで。要は、「いつでも転職できる状態にいる」ことが大事だと。

■一流の人材が、Web 業界に流れてきていることへの危機感

―これから技術というものがどんどんコモディティ化していく流れにあるとも言われますけど、そこに関してはどうお考えですか?

Web 業界でいえば問題ないと思います。技術がどんどん進化しているので、コモディティ化する余地はあまりないように思います。マーケットも拡大していくと思うので、求人自体は増えていくんじゃないかと。

―技術の進化についていける人・ついていけない人の違いはどこにあるのでしょう?

ついていく気があるかどうか、っていうのは大前提大きいですよね。今だって新卒のエンジニアなんていくらでもいるわけで、ゼロから学ぼうと思ったら学べるわけじゃないですか。

会社で安泰な立場にいて、学ぶ必要もないし、学ぶ気もない…という人だとどんどん置いていかれるし、逆に危機感を持って次の準備をしておかなきゃって気持ちがあれば、きちんと学んでキャッチアップすると思うんですよね。

―桂さんにも、エンジニアとしての危機感はありますか?

だいぶあります(笑)。僕はこの会社では100%エンジニアの仕事をしているわけじゃないので。そこはすごく怖いですね。技術は常に勉強しています。コード書く時間もきちんと取って。

―技術の進化についていけなくなる、という危機感なんですか?

というよりは、後進に対する危機感です。Web 業界って、これまでエンジニアが少なかったんです。でもこれからは、優秀な人がどんどんエンジニアのほうに流れてくる。アメリカって一流の人間がエンジニアになって、Google とか Facebook にいくわけじゃないですか。これまでの日本はそれが金融や官僚といったほうに流れることが多かったんですが、最近は Web 業界に流れ始めている気がします。

優秀な人材がどんどん入ってくる中で、いかに自分のバリューを保っていくか。年齢に応じた経験を積んでいかないと、どこかで危うくなると思うので。

一流の人材が、Web 業界に流れてきていることへの危機感

(つづく)

記事提供:CAREER HACK