11月1日と2日の2日間、福島県で第4回の日台 IT ビジネスダイアログが開催され、2日間に渡って日本と台湾との IT 業界の連携について討議されました。毎年日本と台湾を交互に往復して開かれてきたこの会議は、台湾側は経済部(日本の経済産業省に相当する機関)、資策会(資訊工業策進会。経済部の外郭団体)や中華電信の関係者が参加し、非政府間交流を実務レベルで行っています。筆者は今回、この会議で台湾が北東アジアにおけるインターネットのハブになる可能性について講演し、資策会や中華電信の参加者との意見交換を行いました。

この会議では台湾の大手決済代行事業者である藍新科技(NEWEB)のトップも講演し、台湾が越境取引(この場合、中国と台湾)に対してどのような期待をしているかについて触れられました。また筆者自身も、藍新科技が越境取引に積極的に取り組むことは、日本企業が中国大陸向けに商品を販売する際、台湾を決済や物流面で活用する可能性が拡がるという点を同様に触れ、日台が共にこの点について興味があることを示しあいました。この背景には今年6月、中国の大手 EC 事業者である京東商城(360buy.com)が、台湾製の商品を扱う「台湾館」を立ち上げると発表したことがあります。NEWEB は、中国最大の個人向け決済サービスを展開する支付宝(Alipay)と提携し、京東商城を含む複数の中国の大手 EC プラットフォーム上の「台湾企業による EC サイト」で、いわゆる越境取引の決済サービスを拡大させようとしています。

台湾の EC 事業は台湾内での市場規模に飽和感が出始めており、各 EC 事業者はその販路を台湾外に求めようとしています。しかし、同じ中国語を使うことのできる香港やマカオだけでは市場が小さすぎ、中国とは人民元と台湾ドルの直接の交換が出来ない、あるいは通関が直接出来ないなどの課題が存在していました。繁体字と簡体字の違いはあるものの、中国語のままで、かつ文化や習慣の近い中華圏の消費者に対して台湾製品を売ることができれば、従来の台湾市場のサイズとは比較にならない可能性を掘り起こすことができます。こうした中、2010年に中国と台湾の ECFA(中台経済協力枠組協定)が締結され、台湾製の製品を中国国内に販売する際には関税が優遇されたり、台湾以外の企業であっても台湾企業と連携すれば中国国内への販売のハードルが下がるなど、中台の関係は新たなフェーズに移ろうとしています。

中台の越境取引のモデルはこのようなかたちです。中国国内の消費者が、京東商城や天猫などの中国の EC サイトに開設される台湾の EC ショップ(越境販売プラットフォーム)から物を買う場合、いったん支付宝が消費者から代金を回収し、支付宝は米ドルで藍新科技との間で決済を行います。藍新科技は台湾の EC ショップに対してこの代金を台湾ドル建てで支払うことにより、台湾の EC ショップにとっては通貨を気にすることなく、純粋に販路が拡がることに繋がります。もう間もなくすると、この逆のパターンも始まります。台湾の消費者が中国国内の EC ショップで物を購入する場合、台湾の銀行のオンラインバンキングやコンビニで決済すると、支付宝を通じて中国の EC サイトが代金を受け取ることができるようになるというものです。

中国人の台湾観光の開放は、中国の消費者が台湾製品を知る機会を増やすきっかけになっています。2012年は中国から台湾への観光客は240万人に至ると予想されており、台湾市場にとってこの観光需要は重要性がさらに増しています。藍新科技と支付宝の取り組みは、来年以降、中台間の EC 市場の規模拡大と共に、中国の消費者への販売のハブとして台湾が活用されるケースの増加を予感させます。

執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎
記事提供:株式会社クララオンライン