前回「リマーケティング広告が広げる Web 解析+コンテンツ+広告運用連携の可能性」で“Google アナリティクスのリマーケティング連携が示す可能性”を取り上げたように、Web 解析は成果のリザルトと効率・課題改善のレポーターである以上に、事業シナリオに沿った集客のあり方、ブランドに触れた後のユーザー対話手法に至るまで影響力を発揮する。Web 解析の担当者は積極的な KPI の設計推進により、さながら CMO(Chief Marketing Officer マーケティングの最高責任者)のような、「数字の見える化担当者」として、施策全体をコントロール出来る立場になることも出来る。

集客施策のユーザーコミュニケーションシナリオに沿った KPI 設計

さて、今回はそのマーケティングシナリオを意識した KPI 設計について簡単に述べてみたい。Web 解析の KPI 設計は「集客総量(母数)に対して期待する行動(ユーザーアクション)数または好ましくない行動数」の観測であることが多いと思われるが、ここでは陥る可能性が高い「危険な偏り」が幾つか予測される。

図2

特に注意したいのが、獲得母数(集客数、成果数つまりコンバージョン数など)の絶対量の優劣「のみ」に目を奪われること、そして獲得効率(CVR、クリックレートなど)にこだわることだ。成果獲得の効率改善が Web 解析の主たる役割とはいえ、こだわり過ぎると「見える化」を推進するはずの Web 解析が、見落とす領域を作ってしまう。

■「指標数値の上昇」は喜ばしいことばかりとは限らない


商用サイトを運営している限り、Web サイトの運営に関わる各部門が目標数字にこだわることは当然のことだ。しかしながら、目標数字へのこだわりは視界を狭くする。局所的な指標数値の上昇または改善(と捉えるべきかどうかはさておき)は、あくまでも局所的な現象にすぎない。

簡単な話で言うと、ページビューや訪問あたりの PV が上がったといった観測結果では、単なるシーズナルの変化か?TV でタレントが自社サービスの話題を取り上げた?季節コンテンツのディレクトリ構成は昨年同時期と同じ?週次変化は?ユーザービリティーの悪化?かも?ではコンバージョンとの因果関係は?といったように要因を可視化することが第一であり、単純に喜んでいるばかりではいけない。

図3

コンバージョン件数やコンバージョンレートにも、まったく同じことが言える。注意しなければならないのは、目論見(またはそれ以上)の計測結果に至った時、因果関係を紐解くことも同時に怠ってはならないということ。広告施策の効果測定であれば、目論見通りであった場合も、施策プロセスと計測数値の因果関係を再度紐解くことが必要だ。

その習慣をつけておかないと、やがて「指標数値が下がった」時に慌てる事になる。数値変化の因果関係を可視化しておけば悪化時のボトルネックの発見も容易で、関係部門や管理者に報告しにくい、理解されにくい解析結果であっても、きちんと説明できる。

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更に危険なのは、サイト運営上ではどうすることもできない外的要因や市場変化による数値変化があった時に、組織がその要因と市場イメージを共有できない状態で、やがては「母数の確保だ」「新規訪問を獲得しろ」といった営業目標のような目標設定に陥る。

そうなると、市場やユーザーとサイトの関係値、ブランディング、プロモーションシナリオ、ユーザビリティーといった要素を無視した、強引な施策の推進に転じる恐れがある。

■認知経路とプロモーションシナリオの整理


とはいえ、各部門がもつ目標数字へのこだわりは当然捨て切れない。では、少なくともそれら数値の因果関係が可視化しやすい KPI シートのとりまとめを行なって、サイト全体で起こっていることを簡単に把握しやすいレポーティングを構築しよう。

その前に、まず自分たちの行なっている集客施策が「どこの」「どういう状態の」「誰に」「なにを訴求して」「どういう結果を得るのか?」を理解する必要がある。コンテンツを作るにしても、リスティング広告を運用するにしても、何にどのような効果を期待して行なっているのか“施策の役割”を把握しないと、組織内での単純な獲得合戦になってしまう。期待する効果や得る物は成果だけではないのだ。

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Web 解析の KPI シートも、ビジネスモデルを俯瞰して施策要件を整理し、全体戦略に沿った形で、ユーザーの流入状況(⇒集客施策の狙い)、回遊状況(⇒コンテンツ施策の狙い)、成果状況(⇒各施策の目論見達成状況)、そしてそれらの効率を一元的に可視化出来る、全体を見渡せるレポーティングが用意されていることが望ましい。

図6

KPI シートは組織内での意思共通化、各部門での状況把握能力の向上に大きく貢献し、各セクションが事業の共通目論見を持って、(直接的な成果だけではない)最適な施策を立案できるようになる。各セクションはその役割認識と結果を元に、更に細分化した KPI レポーティング設計を行うことで、事業目論見と自分たちの担当セクションに求められる役割を認識した、施策の健全な PDCA サイクルを構築できる。

執筆:株式会社アイレップ Web解析グループ グループマネージャー 床尾一法
記事提供:アイレップ