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ビジネス2012年9月12日 16:00

新規参入が相次ぐ「法人向けオンラインストレージ」、その裏事情と選定のポイントとは

この記事のURLhttp://japan.internet.com/busnews/20120912/2.html
著者:japan.internet.com 編集部
国内internet.com発の記事
「オンラインストレージサービス」と聞いて最初に思いつくものと言えば、SkyDrive や Dropbox といったクラウド上にプライベートストレージを構築するサービスや、社外との大容量ファイルの送受信で使うデータ預かりサービスなどだ。

近年、同領域は参入企業が相次いで競争が激化しているが、社員間でのファイル共有機能などが充実した法人向けオンラインストレージサービスについても目を見張るものがある。IDC が今年1月に発表したデータによると、法人向けオンラインストレージサービスの市場規模は2010年で226億円を記録し、2015年には369億円規模が見込まれるという。

今回は、成長著しい法人向けオンラインストレージサービス市場について、自らも同分野のサービスを手がける株式会社フェアーウェイの代表取締役 安島丈雄氏と、同社経営企画室 広報部 部長 島田祐李子氏に、最新動向をお伺いした。

フェアーウェイの安島丈雄氏(右)と、島田祐李子氏(左)
フェアーウェイの安島丈雄氏(右)と、島田祐李子氏(左)

■ 国内家庭用ゲーム市場をも上回る規模の「法人向けオンラインストレージサービス市場」

まず安島氏は、法人向けオンラインストレージサービスの市場規模は、前述の市場規模よりも更に大きいと分析する。例えば、印刷会社が作成する印刷物データの容量はおよそ数十 MB になることが多い。仮に、20MB の印刷物データを総容量 100GB/月額1万円というオンラインストレージサービスに格納すると、毎月の維持費は僅か2円、年間で100円にも満たない。

しかし、年間維持費100円の印刷物データでも、印刷会社は数万〜数十万円の人件費をかけて制作しており、またクライアントからは数十万〜数百万円の報酬を受け取っている。データにはそれぞれ相応の価値があり、それを加味すると法人向けオンラインストレージサービス市場は少なくても6,000億円規模になるという。市場規模6,000億円と言えば、国内家庭用ゲーム市場(2011年度 約4,400億円、エンターブレイン調べ)にも勝る数値だ。

■ 法人向けオンラインストレージサービスは意外にも儲からない

「ビックデータ」と騒がれる昨今、企業が所有するデータ量は増加の一途を辿っていることは言うまでもない。加えてハードディスクなどの記録媒体の低価格化も進み、一見これらの要因が法人向けオンラインストレージベンダーの参入を加速させているように思えるが、意外にも採算性は悪いのだという。

これに関して安島氏は、データの保存をアウトソーシングするという考えが一般化していないのを理由として挙げる。

法人向けオンラインストレージサービスの採算性の悪さと、その理由を話す安島氏
法人向けオンラインストレージサービスの採算性の悪さと、その理由を話す安島氏

一昨年くらいから SkyDrive や Dropbox などのプライベートストレージが台頭してきたが、個人でようやくアーリーアダプター層以上に普及したのに対して、法人では社内のイントラサーバーや NAS 上にデータを格納することが習慣化されており、法人向けオンラインストレージの顧客の牌は圧倒的に少ない。フェアーウェイのようにスケールアウトが柔軟できる基盤がない限り、採算性の良いサービスにするのは難しいのだという。では何故、採算性の悪い同サービスに参入する企業が多いのか。

理由は主に2つある。1つ目は、以前は「アウトソーシング」や「セキュリティ」などが投資家にとって耳触りが良い単語だったが、今では「クラウド」や「ストレージ」というキーワードが投資家から好かれるという点だ。よくよく Web で展開されている広告を見ると、高額な広告枠でストレージサービスを訴求している企業はすべて株式を公開している。また、これらの企業がストレージサービスをローンチするタイミングは株主総会前など節目の時期が多く、株主への格好のアピール材料となっているのだ。

2つ目は、IT 機器の中でもストレージシステムは減価償却に時間がかかり、裏を返せば一般的なサーバーなどと違って中古市場で高値で売却できる点だ。投資家から数億円を募ってシステムを購入し、その後、法人向けストレージサービスが軌道に乗ならくても、システムを丸ごと売却すれば殆ど痛手を被ることなくサービスをクローズできるという訳だ。

■ サービスの選定のポイントとは

先に述べたとおり、たったひとつの印刷物データが数百万円の売上に繋がるなどデータには価値が付加しており、安島氏はデータを「企業の資産」と訴える。身近な例で言えば、日々の業務で生まれた画像ファイルやテキストファイル、表計算データなどは「小銭」、 Dropbox や SugarSync などのプライベートストレージ、イントラ上にあるファイルサーバーは「財布」、そして法人向けストレージサービスは「銀行」といった具合だ。

しかし、法人向けストレージサービスベンダーの多くは「資産」を預っている意識が低いと安島氏は指摘する。一部のサービスは、職場での利用を推奨しながら、ユーザーがデータをアップロードした段階で使用や変更のライセンスをサービスベンダー側に付与するという条項を、利用規約に盛り込むほどだ。

法人向けオンラインストレージサービスはいずれも健全性や堅牢性が高いことを謳っており、サービスの良し悪しをパンフレットやサービス紹介サイトの情報だけで判断するのは難しい。まずは利用規約をしっかり確認し、自社の用途に則しているか見極めるのが良さそうだ。

また安島氏は、各社のサービスは機能面で大きな違いがないので、スペック表を並べて検討するよりも、自社で苦もなく払える月額費のものを選ぶべきだと述べる。いの一番でコストカットの対象にならないようにすることが重要という。

フェアーウェイ 島田氏
フェアーウェイ 島田氏

まだまだ歴史が浅い法人向けオンラインストレージ市場は、ベンダーの新規参入と淘汰が繰り返されている状態。加えて、2012年6月に起こったファーストサーバショックも鑑みて、データの保存はファイルサーバーをメインにし、法人向けオンラインストレージをバックアップ先として使うのがよさそうだ。データが企業資産であることを念頭に、改めてデータの運用・管理方法を見直していただきたい。
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