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台湾三不通

株式会社クララオンライン 家本賢太郎
2012年6月11日 / 10:00
 
 
昨年10月の当コラムでは「台湾と中国が海底ファイバーで直接繋がる」として、台湾と中国のあいだが一本の海底ケーブルで直接繋がるようになるというニュースを取り上げました。長年、三不通と呼ばれていた台湾と中国との関係が、三通(通商・通航・通信)へと変わる最後の一つの山が、この通信分野でした。

その記事を書いて以来半年以上が経過し、実際に中国と台湾のインターネットが直接繋がっていることが分かる資料も揃ってきましたので、今回は「ケーブルが繋がったあと、インターネットが繋がっている」というフェーズに移ったことに触れ、これによる期待を考えてみることにします。

中国と台湾とのあいだのインターネットのトラフィックの経路は、従来は香港や韓国、もしくはアメリカの ISP を経由するルートが多く、直接中国の通信事業者(ここでは中国電信・中国聯通という固定通信のキャリア)と台湾の通信事業者との間で繋がっている接続経路を見ることはできませんでした。これによってインターネットの通信に相互で大きな不自由があったとは考えられませんが、政治的距離が近づく中国と台湾のそれぞれの関係において課題の一つであったとは考えられます。

一方、いくつかの海底ケーブル網の中には、周辺諸国を含め、台湾と中国それぞれにランディング(陸揚げ)されているものは従来から存在しました(海底ケーブルは、特定の地点間を結ぶものと、複数の都市に陸揚げされるものとがそれぞれ存在します)。厦門と金門島の間でつながった通信ケーブルの場合、物理的に一本の海底ケーブルで繋がったことによる意義が大きく、実際に中国・台湾だけでなく、国外のメディアでも数多く報道されました。メディアでの取り上げられた量から見れば、中国・台湾のそれぞれにとって政治的な効果は十分にあったといえるでしょう。

ところで、物理的に海底ケーブルが繋がったとしても、その海底ケーブルを使った通信が行われ、かつそれぞれの通信事業者がインターネットの相互接続を始めなければ「インターネット網が繋がった」と言うことはできません。インターネットの世界の一般的な手続きとして、相互の ISP や通信事業者が相互接続に同意した場合、まずは物理的に接続する手法を検討して実際に接続作業を行い、その上で、ルータと呼ばれるネットワーク機器の設定を双方で変更し、初めてこれで通信が始まります。海底ケーブルが接続された当初は中国側の通信事業者と台湾側の通信事業者のインターネットの通信は確認することができませんでしたが、最近になって下の図のような通信経路が確認できるようになりました(traceroute の結果の抜粋)

図1の場合には、AS4837(中国聯通。AS4837 は同社の基幹網と呼ばれるコアネットワーク)と AS9505(中華電信の TWgate という国際バックボーン)とのあいだで相互に接続されていることがわかります。図2の場合には、同様に AS4837 と AS3462(中華電信の HiNet という国内バックボーン)が、図3の場合には AS4134(中国電信。AS4134 は中国電信の基幹網)と AS3462 が接続されていることがわかります。なお、2012年5月時点では台湾側については中華電信以外の FET などによる接続は確認されていません。なお、これは筆者の完全な私見ですが、これらの経路情報で確認できる範囲では、中国の通信事業者の設備が台湾にある可能性が高いのではないかと見ています。

図1:traceroute の結果の抜粋1
図1:traceroute の結果の抜粋1
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図2:traceroute の結果の抜粋2
図2:traceroute の結果の抜粋2
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図3:traceroute の結果の抜粋3
図3:traceroute の結果の抜粋3
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ただし、今のところ中国と台湾とのあいだの物理的な接続帯域や、インターネットの接続帯域がどの程度であるかというデータは特に公開されていません。中国と国外のインターネットの接続帯域は6か月に1回発表される CNNIC による報告書に記載されていますが、通信事業者ごとにまとめられているデータには台湾は含まれていないとされており、詳細は判明していません。

また、そもそも中国と台湾のそれぞれの通信事業者にとって、ケーブルを通じて物理的に接続されていることは報道等を通じて明らかにされているものの、互いのインターネットバックボーンが相互に接続していることには言及していません。既に一定の時間が経過していることから考えても、改めてこれらについて報道する可能性は低いと考えられます。

この新たな中国-台湾間のインターネットの経路は、いくつかの新しい期待を生み出す可能性をもっています。まず一つに、中国と台湾間のインターネットの通信はオンラインゲームやモバイルなどのコンテンツの拡大によってかなりの増加傾向にあると考えられ、双方にとって通信品質の向上という最も大きなメリットが挙げられます。台湾のオンラインゲームが中国に進出する流れも増えていますし、同時に中国のゲームメーカーも台湾市場に次々とコンテンツの供給を始めています。次に、中国向けの情報配信の拠点として、従来は香港がその代表格でしたが、台湾という新たな選択肢が生まれるという点も指摘することができます。特に台湾のデータセンタコストは日本や香港の同品質のデータセンタと比べて割安感があります。また日本との通信遅延も小さいことから、日本からの通信の中継地点になる役割も期待できるでしょう。

引き続き注視するべきポイントについては、中国側は既に中国電信・中国聯通共に接続が行われている一方、台湾側について中華電信以外の通信事業者の接続が行われるかどうか、あるいはこの経路を活かしたサービスがどのように拡がるかなどが挙げられます。中国と台湾のインターネットの相互接続がどのような効果をもたらすかは、もう少し時間をおいてみるべきでしょう。

(執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎)

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