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2012年後半の中国のインターネットを読む

株式会社クララオンライン 家本賢太郎
2012年5月17日 / 19:00
 
 
そろそろ今年後半の中国のインターネットについて考える時期が来ました。5月に入って2012年の第一四半期(1月-3月)の関連指標が大方出そろってきていることもあり、モバイル、EC、広告分野など各市場の下期の動向と、クラウドやデータセンタ関連の投資動向について見極めていく必要があります。

ただ、読者の方は十分ご存じのとおり、今年は秋に第18回中国共産党大会が開かれる予定で、ここで習近平新政権が発足する見込みです。新政権がインターネット関連の産業にどのような姿勢で臨むかは当然まだ見えてきておらず、不透明な材料の一つです。昨年以来、政権は実質的な引き継ぎ期間に入っているため、こうした段階で出てくる政策や発表内容を見て予測を立てる向きもありますが、まだ筆者自身は明確な観測が得られておらず、今の段階は様子見の状況です。

後半を考える前提となる前半の中国のインターネット関連市場については、政府の関与は比較的落ち着いていたと概評できそうです。企業関連で最も大きなトピックとして挙げられるものとして、極めて激しい競争関係にあった動画サイトの優酷網(Youku)と土豆網(Tudou)の合併のニュースがありました。突然の公表だったために中国内外では若干の衝撃が走りましたが、少し時間が経過した後では、二大プレイヤーが残る市場ではなかったという整理もできそうです。

この背景には、政府がライツ関連の処理について、従来放置気味だった消極的な動きから、この数年の時間軸の中で徐々に整理しようとする動きが強まっていました。今回の合併は単なる二社の経営方針による意思決定だけでなく、政府の求める方向性に沿ったものと受けとめています。

また、こうした動画サイトだけでなく、無免許の有料 IPTV 配信サービスについても主要都市で合法化するためのプロセスに入ろうとしている動きもあります。大手動画サイトの規模となるビジネスは規模に対して参入のハードルが高いものの、こうした有料 IPTV 配信サービスは、今までは「裏」だったものが「表」になれるかどうかというものであり、各地方政府の意向に関心が向けられています。

規制まわりでは、重慶での事件関連でデマや反政府的な微博の発言が消されたり(中国国内の報道では1か月で約21万件)、一部でこれに伴う拘束者が出たりという事態がありましたが、事件の規模から考えれば想定された範囲内だったといえるでしょう。また4月から5月にかけての陳光誠氏事件関連の情報に関しては、一部で検索エンジンや微博などの関連キーワード検索への影響やページ削除がありましたが、こちらも同様に「普段の中国」の範囲は超えていないと見ています。

一方、モバイル関連で取り上げるべきポイントは3Gの契約が増え続けている点です。中国の大手コンサルティング会社である易観国際の報告によれば2012年2月末時点で3社合計は1.4億件に達しています。携帯電話自体の契約全体が10億件ですのでこれから見ればまだ比率は低いものの、ポテンシャルとして2Gから3Gへの乗り換え需要はまだ十分に見込めることから、都市部を中心に3G向けのコンテンツ市場は引き続き拡大するでしょう。ただし、コンテンツ課金は依然として成熟しておらず、日本や欧米のようにここで ARPU を確保するモデルにはまだ距離があります。易観国際によれば今年後半には3Gが占める携帯電話の総契約の割合は2割になると予測しています。

EC における B2C 市場の規模は拡大をし続けており、2012年の市場規模は2011年のおよそ2倍となる4,500億元が見込まれています(易観国際による)。しかし、易観国際は中国の B2C 市場の拡大にあたって物流ネットワークに課題があるとして「物流の動きがどうなるか」を注目材料に挙げています。

こうした産業を支える通信インフラまわり、特にデータセンタ・クラウド関連の投資は下期もさらに加速が続きそうです。筆者が入手している情報の範囲でも、複数の主要都市で大規模な最新設備のデータセンタがいくつか出来上がる見込みですし、データセンタ関連銘柄では21vianet(世紀互聯)、Dr.Peng(鵬博士)グループに続いて Sinnet(光環新網)が株式を上場させます。このあたりの市場が活況なのは、コンテンツ関連の産業が成長していることを裏付ける定性的な要素でもあります。

筆者の下期の注目点は2点です。一つは電子書籍・電子出版関連分野がどの程度中国で動くかです。この分野は新聞・出版関連の規制と密接にリンクしており、容易に国内外の企業がサービスを手掛けられる分野ではありません。一部で、日系企業も含めてアニメなど言論に近づかない領域では、特定の地域内に限ったライセンスを用いた取り組みが始まっていますが、中国の潜在的な市場規模を考えれば海外のコンテンツホルダーは全国レベルでの事業展開に意欲を示すのは当然です。

中国の場合、報道や言論にはいずれにしても入り込むことは出来ませんが、アニメなどエンターテインメント系のコンテンツについては余地がありそうです。いくつかの外資系企業が関心を持っているものの、ライセンスの問題もあって明確な位置まではたどり着けておらず、今年中にどの程度の進展があるのかどうか注目しています。

もう1点はオンラインゲーム市場の拡大です。2011年の四半期ごとの成長規模は2010年までのそれと比べて角度をつけ始めており、直近では2011年第四四半期で前四半期比3割を超える成長をみせています(易観国際調べ)。通信環境が徐々に整いはじめ、ゲームコンテンツの配信量も増えてきた昨年以降、ゲーム企業の投資動向には弾みが付きそうです。7月に上海で開かれる ChinaJoy 2012は、後半のゲーム業界を予測する上で、日本からの参加の価値も十分にあるでしょう。

(執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎)

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