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ビジネスにおける「お詫び」の研究 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤

経済評論家 山崎 元
2012年1月13日 / 10:00
 
今回は、ビジネスに於ける「お詫び」について、考えてみたい。ビジネスの場では、小さなミスでも謝罪のやり方を間違えると意外な大ごとになることがあるし、大きなミスでも手順を尽くして正しく謝罪すると案外無事に収まることがある。ピンチの脱出法の一つとして、謝罪の方法は是非心得ておきたい。

● 謝罪の基本5箇条

ビジネスでの失敗について謝る場合の基本は、以下の五つに集約できる。

・決して嘘をつかない
・できるだけ早く謝る
・謝罪に言い訳を混ぜない
・相手の感情への対処とこちらの責任問題とを峻別する
・具体的な対策を用意して詫びる

謝罪の際に嘘をついて、それが後から発覚するのが「最悪の事態」だ。しかし、自分の罪を軽く印象づけたいがために、大小の嘘を交えることは、謝罪の局面ではよくあることなのだ。

しかし、たとえば、こちらが「知らなかった」と言っていた時点で、既に知っていたことを裏付けるような証拠や証言が出てくると決定的にまずいことは想像できるだろう。

また、厳密な意味で嘘が立証されなくても、嘘を言ったように見える展開は非常にまずい。「これで大丈夫です」と言った言葉が、嘘のような印象になるからだ。ビジネス・パーソンの場合も、同様のミスの連続は何としても避けたい。謝罪する状況では、自分の言葉を信じて貰えなければ、有効なことが何も伝えられなくなってしまう。謝罪の言葉の中で嘘が露見した場合、最悪の場合、先にお金でも払う以外にコミュニケーションの取りようが無くなってしまう。

無難な方法は嘘を決して言わないことだ。謝罪の場面ではなかなか難しいことでもあるが、腹を括って正直になるのが、多くの場合たぶん一番いいと覚えておこう。

不祥事やミスに対する相手の怒りは、不始末の発覚からしばらくの間、時間の経過と共に増大する。謝罪の効果は、相手の怒りと謝罪の内容(軽重)のバランスで評価されるので、少しでも、早く謝るのが無難だ。

ところで、謝罪とは何を目的にした行為なのか。

経済的補償のような責任の清算は、謝罪とは別に、法律や契約で決まっていたり、裁判で決まったりする。つまり、謝罪とは、相手の怒りの感情を鎮めるために行う行為であり、厳密にはそれだけが目的だ。謝罪は交渉ではない。だから、謝罪の際に言い訳を混ぜると、受け手側では、「コイツは自分が悪いと真剣には思っていないな」と感じて、怒りのレベルが却って上がってしまうことが多い。相手の損害・不便・不具合などを「重大だと考えています」という気持ちを伝えることだけが謝罪では必要であり、自分に悪意がなかったなどの言い訳は全く余計なのだ。自分の気休めを謝罪に混ぜるのは控えるべきだ。

謝罪の目的は、相手の感情に対処することだが、この際に、法律・契約などで必要な手続き以上に、相手に対して何かを約束するようなことをしてはいけない。たとえば会社の不始末を詫びる場合は、自分が会社を代表する個人として相手が被った損害や不具合を重大に考えていることを最大限に伝えなければならない一方で、会社の株主の利益を考えると、会社にとって必要で且つ適切な補償以上の補償を約束するようなことを個人の裁量で行ってはいけないことが分かるだろう。

また、個人の失敗を会社(の上司)に謝る場合に「かくなる上は、私は会社を辞めてもいいと思っています」というようなことを言うと、最悪の場合、自己都合退社に追い込まれることがある。余計な約束をせずに、ひたすら相手の気持ちを慮るのが謝罪の要諦だ。

尚、外国が絡む謝罪の場合は、先方の法律や文化を踏まえた行動が重要な場合がある。単なる謝罪の言葉のつもりが、裁判で争う余地のある法的責任までを認めたことになるような場合もある。外国でトラブルを起こした場合、或いは、外資系の企業に勤める場合などは注意しよう。簡単に「アイム・ソーリー(I am sorry.)」と言ってはいけない場合もある。

また、謝罪をするにあたって、これからどうするのかという「その時点での」具体的対策が必要だ。何も用意がない場合には、「事態を重大だと思っていない証拠だ」と判断されてしまう危険がある。具体策に関する相手側の期待値も、時間と共にハードルが上がることが多い。その意味でも、早く謝る方がいいのだ。

● シナリオとリハーサル

ビジネスマンだけではなく、政治家も謝罪をする機会が多い。有名なところでは、クリントン元米大統領がホワイトハウスの研修生だった女性と不適切な行為を行った嫌疑に関する謝罪会見がある。あの謝罪会見では、クリントン元大統領についたアドバイザーが、クリントン氏に謝罪会見のリハーサルをやらせたことが後に明らかにされた。アドバイザーはこのリハーサルをビデオに収録し、要所要所を数十人のモニター者に見せて、「適当」と思うか、「不快」と思うかについてアンケートを採り、言葉の表現や、言い方・表情などをチェックして修正したという。努力の成果が実って、この会見は、まずまず成功だったと事後的に評価されている。

会社単位の不祥事であっても、個人が犯した失敗やミスであっても、謝罪の場は、大いに注目される。自分だけでなく、相手の記憶にも深く残ることおを忘れてはいけない。場合によっては、シナリオを作り、リハーサルを行って、しかし、なるべく早く本番に臨もう。

人間は感情が重要だ。それはビジネスでも同様だ。適切な謝罪によって、相手の怒りの感情の拡大を抑えることが出来れば、後が随分違う。事態を軽く見ずに、謝罪には全力を傾けることが肝心だ。


【筆者紹介】
山崎 元(やまざき はじめ):経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員。58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

※この記事は、リクルートエージェントのウェブサイト「ビジネス羅針盤」に掲載された内容をjapan.internet.com 編集部が再編集したものです。リクルートエージェントの転職支援サービスについては http://www.r-agent.co.jp/ をご覧ください。

 
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