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キャリアとしての「コンサルタント」 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤

経済評論家 山崎 元
2011年12月22日 / 10:00
 
● 人気の就職先「コンサルティング会社」

コンサルティング会社は近年人気の就職先の一つだ。一流大学の学生の就職希望先を見ると、リーマンショック以降、外資系の金融機関(特に投資銀行)の人気にかげりが出たが、大手コンサルティング・ファームの人気は健在だ。

就職先としてコンサルティング会社を選択する「心」は、以下のようなものだろう。

先ず、今後長年ビジネスの世界でやっていくとして、自分がどの分野・会社に向いているか、よく分からないので、コンサルタントとして勉強しながら適職を見つけたい。幸い、自分は、勉強したり頭を使ったりすることが苦手ではないし、知識欲はある。加えて、正直なところ、メーカーや銀行などで末端の一社員として下積みから始めるのは気が進まない。コンサルタントして成功するのもよいし、コンサル先の経営者に気に入られて幹部社員として招聘されるようなチャンスもまたよいだろう。「インテリ型モラトリアム」とでも名付けたい職業選択動機だ。

就職先としてのコンサルティング会社のいいところは、若い時分にハードワークの環境に放り込まれて勉強させられるので、能力全般が伸びるケース多いことだ。また、通常の会社勤めよりも経営者層と接することが多く、「ある種の」世間と広く接触することが出来ることもある。ステップ・アップのためには海外の一流大学院でのMBA取得がほぼ必須であることから、必然的に国際性が身につく場合も多い。

ある意味では、「目線を高く」維持できる長所があるのだが、目線は高いが、足が地に着いていない、つまり、ビジネスの実務的な能力を持たないまま、実力の伴わないエリート意識を持って空回りするようなケースがある。海外MBAにしても、コンサルティング以外の業界では、「英会話とエクセルくらいはできるのだろう」というくらいにしか評価されない場合が結構多い。採用は本人の能力と人柄次第で、前者は主に実務経験から評価される場合が多いし、後者では「エリート意識」がむしろ邪魔になる。

また、コンサルティング会社は、社内の競争が激烈で、担当するプロジェクトによっては心身の限界を超えるハード・ワークとなることもあって、若くして過大なストレスを抱えたり、体を壊したりすることもある。

大手のコンサルティング・ファームに就職できても、必ずしもいいことばかりではない。

● 実業界への転身は若い方がいい

コンサルタントとして働いている人には、コンサルタントの仕事が好きでコンサルタントを続けていこうとしている人と、将来他の仕事をするためにコンサルタントをしている人の二種類がいるように感じる。

当面その意志が明確でないとしても、後者の可能性を求めてコンサルタントをしているケースは少なくない。先にも書いたように、理想的なケースは、コンサルティング先の経営者に見込まれて、経営に関わる幹部社員としていわば「参謀」のように雇われていくケースだろうか。

しかし、コンサルタントから実務界への転身では、大きく言って二つの問題がある。

一つは、コンサルタントとしての関わりだと、現場の実務に関わる基礎知識や経験が不足することだ。たとえば、金融関係の仕事をすることを考えると、銀行で法人取引に関わるにしても、融資をするにしても、あるいは証券市場関係の仕事や、ファンドマネジャーのような仕事をするとしても、金融業以外の場に長く身を置いていたことで、たとえば金融マーケットに関する感覚や基礎知識が十分でない場合がある。

こうした転職の場合、出来れば28歳まで、遅くとも30歳までには希望する業界への転職を済ませて置きたい。転職してその業界に身を置きながらある程度の期間、たとえば2年程度集中的に基礎を勉強すると、その業界の知識でだいたい周囲にキャッチアップすることが出来て、更にコンサルタント時代の物の考え方や、知識・見識を強みとして使うことが出来るようになるだろう。

敢えていえば、恥をかきながら勉強が出来るくらいの年齢で転職することが重要だ。30代になると、雇う側から見た要求水準が上がることが多いので、適当な助走期間を取ることができにくい。また、年齢に伴う、学習能力低下の問題もある。

もう一つの問題は、外から業界や会社に関わるのと、その会社の中に入るのとでは、相当に印象が異なる場合が多いことだ。特に、社長の態度が変わる場合があって、社長との信頼関係だけを頼りに幹部社員として入社する場合には、大きな問題になる。

社長から見て、社外のコンサルタントとは必要な部分だけの付き合いだし、お金を払ってコンサルタントを使っているとはいえ、社外の人として接する距離感があったが、自分がすっかり丸抱えする自分の部下となると見方も接し方も変わることがある。一緒に働くようになってみて、社長の側でも、元コンサルタントの側でも相手に幻滅して、半ば喧嘩のように別れ別れになるケースが少なくない。また、社長の後ろ盾を失うと失職する危険があるし、社長だけに評価されているという状態も、働く上であまり快適なものではない。

この種の心配は、コンサルタント以外からの転職にも付きまとう話ではあるが、コンサルタント自身が企業や経営者に対して(要は自分の周囲に対して)辛口で自分に都合のいい感想を持ちがちなことや、採用する側でも期待値が高く、これを満たすことが難しい場合があるなどコンサルタントからの転職特有の問題が加わることがある。

● 実業界からコンサルタントへ

コンサルティング業界以外を一括りに「実業界」と称するのは些か大雑把で恐縮だが、実業界からコンサルティング業界に転身する人にも典型的な二つのパターンがある。

一つは、海外のMBA留学をきっかけにコンサルタントに転身するケースで、企業派遣の留学の後に転職する場合も多い。コンサルティング会社に就職した場合、どこかのタイミングで取得しなければならない学位を既に取得している点の気楽さがある。

企業派遣留学の後に転職するケースでは、些か後ろめたい感じもあるかも知れないが、どこで働くかは本人の自由だ。留学費用の一部返還など後から清算する方がいい場合もあるだろうが、転職自体は企業留学の直後であっても原則として構わないと考えるべきだ。

また、企業派遣留学の後に、元の職場に戻って、あまりのつまらなさに転職する人もかなりの数いる。留学で出来た人脈を辿ってどこかのコンサルティング会社に転職するのは、容易な場合が多い。現場の同僚から見ると、会社派遣の留学から戻ってきたMBAは、恵まれた条件で勉強に行って「実務を2年間休んでいた人」というだけなので、何ら特別な人ではないが、留学して来た側からすると、会社の欠点がよく見えてしまうし、自分が経営に関わるポジションで遇されないことへの不満も募ることが多い。

この種の転職の場合、コンサルティング会社からまたそれほどの間をおかずに実業界に転職するケースもある。これは、コンサルティング会社を、一種の研修機関兼職探しの足場として使っているといえる。全ての人が成功しているとは言わないが、はじめに実業界に就職して、コンサルティング会社を経た後に、自分の適職を見つけている人がかなりいる。現実的なキャリアプランと転職法としては一考に値する。

もう一つのパターンは、実業界でそれなりに長い経験を積んで、第二の人生と言わないまでも、キャリアプラン後半の職業としてコンサルタントを選ぶケースだ。年齢的には、早くても30代後半からだ。この場合、コンサルティング会社に転職するよりも、コンサルタントとして独立する人の方が多いかも知れない。

コンサルタント本人の経験や実績、従って得意分野がはっきりしているので、顧客の側から見ると使いやすい面があるが、成功・失敗両方の例が共に多数ある。

本人がコンサルタントなのだから、需要の予測や顧客との関係が大事である、といった当たり前のことを忠告するのは憚られるが、一番典型的な失敗例は、自分の所属していた企業とかつての自分の地位が持っていた対外関係のポジションを自分の実力だと勘違いして、十分な顧客を確保できないケースだ。

余計な心配かも知れないが、いきなり独立するのではなく、ある程度サラリーマンを続けながら副業としてコンサルティングの仕事を立ち上げるとか、コンサルタントして独立する前に、やはり副業として評論家としてある程度の足場を固めるとか、リスクを軽減しながら、やや慎重に新しい道に踏み出す方法を考えてみた方がいい場合もある、と忠告して置こう。僭越にも、コンサルタントへのコンサルティングである。


【筆者紹介】
山崎 元(やまざき はじめ):経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員。58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

※この記事は、リクルートエージェントのウェブサイト「ビジネス羅針盤」に掲載された内容をjapan.internet.com 編集部が再編集したものです。リクルートエージェントの転職支援サービスについては http://www.r-agent.co.jp/ をご覧ください。

 
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