Business

ビジネス

職場における男女のあれこれ 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤

経済評論家 山崎 元
2011年12月16日 / 10:00
 
重要な問題なので、たまには柔らかい話題で行こう。筆者の得意分野ではないが、恋愛問題なども含めて職場の男女の問題について書いてみよう。

よほど特殊な職場以外は、男性と女性の両方が職場にいる。当たり前のことなのだが、これがなかなか悩ましい状況を生む。特に、転職で職場が変わったような場合には、前の職場での「慣れ」をそのまま持ち込んではいけない。海水浴の際に、浅瀬から沖に向かって水深を確かめながら歩くような気持ちで、「絶対安全」な常識からスタートして、徐々にその職場特有の深みを探る慎重さが必要だ。

職場の男女問題が難しいのは、ある意味では相容れない重要な前提が二つあるからだ。一つの前提は「男女同権」、もう一つの前提は「男女、二人で席を同じうせず」だ。全てが完全に男女同権なら異性に気を遣う必要は無いはずだが、現実は、そうではない。

● なにはともあれ「男女同権」!

男女同権は、あらためて言うまでもないあるべき社会の大前提だ。しかし、社会が完全にそうなっているわけではないので、その応用が難しい。

たとえば、応接室に通したクライアント(顧客)に、男性がお茶を持ってくる会社は一体どれくらいあるだろうか。筆者が今までに勤めた13社には、1社もなかった。外資系でかなり厳密に男女差別を排している会社でも、お茶を持ってくるのは女性が多い。これは、一つには現時点で女性の方がこうしたサービスが上手な場合が多いことが理由だろうし、もう一つには相手方にとっては、女性がお茶を出してくれる方が普通であり、相対的に快適である確率が高いからだろう。建前は男女同権でも、人の感じ方は建前からずれている。

この場合、建前に異議を唱えるのも、他人の感じ方を否定するのも社会的に賢明でない。
現在はどうか分からないが、筆者の経験では、たとえば会社のエレベーターの乗り降りで、商社では多数派ではないが「レディー・ファースト」で女性に先を譲ろうとする男性がいるのに対して(海外駐在経験者が多いからだろう)、銀行や証券会社では男性が当然の顔をして胸を張って先に乗り降りするケースが多かった。

たとえば、こうした男尊女卑的環境に慣れた銀行出身者が外資系の会社などで男女同権が進んだ会社に転職した場合、職場のコピー機の紙詰まりなどの際に、思わず「誰か、女の子はいないか」などと口に出してしまう可能性がある。この場合、職場の庶務は女性がやるものだという先入観が不適切だし、「女の子」と口に出しては決定的に拙い。

ちなみに、転職後には、ネットワークの設定、コピー機、FAX、電話機(間違いなく「保留」と「転送」が出来ますか?)などの使い方を、早くマスターする方がいい。日常のストレスが減るし、一人でも安心して残業が出来るようになるからだ。

何はともあれ、特に男性には、男女同権を強く意識することと、特に言葉遣いに気をつけるべき事を強調しておきたい。

他方で、本当に難しいのは、女性の側かも知れない。男女同権を前提としたものの言い方をした場合に、これを不快と感じる男性(いいことではないが、「感情」は存在する)、特に、そう感じても表面に出さない男性がいるかも知れないからだ。

● どこまでがセクハラか


「セクシュアル・ハラスメント」(性的嫌がらせ。以下「セクハラ」)は近年とても有名になった言葉だが、問題を正確に理解できていない人が多い。

例えば、以下は相手がセクハラだと言えば全てセクハラになる可能性がある。

職場で女性(男性)の裸の写真を大っぴらに見ていたら、それがPCの画面でも、雑誌でも、芸術であっても、性的な連想を喚起し不快であるかも知れないのでセクハラになる可能性がある。

仕事上の都合で訊いたつもりでも、「結婚の予定はありますか」とか「出産の予定は?」という質問は、相手の性的なプライバシーに踏み込んだ発言になるので、セクハラといわれる「可能性」がある。そもそも、結婚も出産も相手の当然の権利なので、厳密には、質問すること自体が不適切なのだ。それでも、どうしても訊きたい場合には、いい加減に訊かずに、仕事上の目的を告げて正確に質問すべきだ。

秘書の女性(男性)が、遅くまで仕事を手伝ってくれた。感謝の意を込めて、食事をご馳走したい。しかし、これもセクハラとされる可能性がある。職務上の権限を利用して、異性を一対一での飲食に付き合わせたと言われかねないからだ。秘書が「ありがとうございますぅ」といって喜んでついてくるからといって油断してはいけない。

時を変えて、他の社員も一緒に呼んでお礼をするのが正しい。社内にいる秘書の友人を誘うのが喜ばれるだろう。お礼をすること自体は「いいこと」だから、そうするべきだ。

最悪の場合、「夜のお付き合い」は、相手を陥れる罠であるケースもある(本当にある!)。誘ってみたらいい雰囲気で付き合ってくれたので、何回か誘ったら、ニューヨークの本社に通報されて、失脚した、というようなドラマのような事例がある。外資系の会社などで、相手を失脚させる場合、蔭で悪口を言うだけでなく、経費の不正(多くは、仲間内の飲み代を接待費に回す)を本社に通報したり、セクハラの線を狙って仕掛けたりする場合がある。問題が表面化した場合、直ぐにクビにならなくても、本社にセクハラ問題の研修を受けに来いと強制されて、会社に居づらくなるようなパターンもある。

もちろん、「女らしい」「男らしい」といった言葉もダメ。オフィスで洋服を脱ぐのもダメ(全部でなくても)。

基本的には、男女でちがいのある問題や性的な問題について発言しないことと、男女が「二人きり」になる機会を絶対に作らないことが大事だ。それと、一度は、最悪のケースを想像してみるといい。

● 社内恋愛はどうするか

昔も今も、職場結婚は多い。人間は、近くで何度も見ている異性を「いい」と思うようになることが多いものなのだ。

社内での恋愛関係については、かつてのように「バレたら結婚を覚悟せよ」というような窮屈さはかなり減ってきた。「アイツとアイツは出来ている」と同僚達が言い合って、本人達もそれを認めて気にしないような、自由な雰囲気の職場も増えている。羨ましいことだ。

しかし、夫婦や親子が同時に勤務することを禁止している職場が多くあることからも分かるように、二人が特別に親しいことは、職場や職種によっては不都合な場合がある。たとえば、一方が社内でも守秘が必要な職場にいる場合、二人が親しいことをオープンにすると不都合なケースが多いだろう。

秘密に出来るなら秘密にしておくのがいいのだが、社内恋愛を秘密にしておくことはなかなか難しい。そもそも周囲に観察者が多いし、二人のうちどちらかが友人に話すことが多く、友人はたぶんまたその友人に話す。それに、特に恋愛の初期には、当事者のどちらかが浮かれてしまって、関係がばれてしまうことが多い。

望ましくは、職場の雰囲気や仕事配分の設計を、社内恋愛が生じても問題のないようにして、開放的な職場を作るべきなのだろう。だが、なかなか理想的な職場はない。

恋愛の当事者の一方に配偶者があるケースも多い。いわゆる「不倫」だ。これは、問題としてなかなか深刻で、そもそも違法行為だ。事実を他人に掴まれた場合、先のセクハラ以上の問題になることを覚悟しなければならない。配偶者に訴えられて、損害賠償を請求されるような裁判沙汰もあり得る。

それでも、「不倫」が無くならないのだから、男女の仲は難しい。

● 社長の社内恋愛

筆者は女性社長の知り合いが多くないので、男性社長の問題だけを取り上げるが、社内に「特別な関係」の女性社員を「絶対に、置いていない」と言える社長が、いったいどれくらいいるのだろうか。自信を持って「いない」と言える社長の数はそう多くない。

中には、秘書や広報といった名目でいつも相手を側に置いていて、これが他社にまで広く有名になっている経営者もいる。そこまで露骨でなくとも、社内に特別な相手がいて、当人は秘密が守られていると思っているが、社員にはすっかりばれている、というケースが実に多い。

厳しく言えば、社内の女性をどう扱っているかで、その社長の人格や経営姿勢が分かる。社長室を訪問したときに、明らかに愛人ではない、仕事本意で信頼されて使われているような秘書の女性がお茶を持ってきてくれると、その社長を信頼したい気分になる。

ここで、敢えて社長を弁護すると、社員を愛人にしている社長がこれだけ多くて、それが傾いた会社ばかりでないということは、愛人で会社は潰れないということだ。筆者が常々思っていることだが、「社長が女性に熱を上げている間は会社は潰れないが、社長が男に入れあげたら、危ない」。同姓愛がいけないなどと言っているのではない。ここで言う「男」とは、役者・スポーツ選手(特に相撲か)・政治家などであり、社長がいわゆる「タニマチ」(スポンサー的後援者の俗称)になることが「危ない」と言っている。女性にかかるお金とは桁が違うし、仕事そっちのけでの応援になることも多いからだ。

そういうわけで、社長の愛人が社内にいるくらいで会社は潰れないのだが、それがいいかどうかは別問題だ。社内の愛人はほぼ必ずばれているし、社員はかなり苦々しい思いでこれを見ている(「見ていないふりをしている」か?)ことが多い。その雰囲気が嫌で、会社を辞める社員もいる。できたら、そういった関係は社外に持っていただきたい、と世の社長さんたちにはお願いしたい。

● 社内に「異性の友人」を持て

男性は女性と、女性は男性と上手くやっていかないと、職場の居心地がよくない。徹底的に距離を取る、というのは愚策だ。さりとて、社内の異性に二人きりで接触する機会は作らない方がいい。加えて、社内の情報も欲しいし、自分がオフィスでどう見られているかということも重要だ。

こうした難題に対処する上で最も力になるのが、社内における「異性の友人」だ。年上でも年下でもいいが、お互いに明らかに「愛人」ではない相手がいい。もちろん、それでも、二人だけで会うのはなるべく止めた方がいい。

個人的な相談も本音でできる異性の友人が社内にいると、彼女(彼)を一緒に誘うことによって、社内の別の異性誰とでも気兼ね無しに共通の時間を持つことが出来る。徹底的に信頼できる相手であれば、社内の「本命」と機会を作る際にも協力してくれるだろう。

こうした異性の友人に対しては、最大限の誠意を持って接することが大切だ。彼女(彼)の相談事に親身になって応えることも大切だし、仕事上の協力もおこたるべきではない。そして、自分自身が職場によく溶け込んで、好感を持たれているようでないと、こうした貴重な友人は持てないだろう。

筆者自身、自分にそこまでの自信がない領域だが、目指すに値する状況としてご紹介する次第だ。


【筆者紹介】
山崎 元(やまざき はじめ):経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員。58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

※この記事は、リクルートエージェントのウェブサイト「ビジネス羅針盤」に掲載された内容をjapan.internet.com 編集部が再編集したものです。リクルートエージェントの転職支援サービスについては http://www.r-agent.co.jp/ をご覧ください。

 
【関連記事】
金融への就職をどう考えるか 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤
会社の倒産・リストラの時にどうするのか 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤
ビジネスパーソンのニュース収集術(後編)〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤
ビジネスパーソンのニュース収集術(前編) 〜 経済評論家・山崎元のビジネス羅針盤
人生自己責任時代の働き方五箇条 〜 経済評論家・ 山崎元の転職原論(12)

関連キーワード:
転職
 
リクルート
 
ベンチマーク
 
FAX
 

New Topics

Special Ad

ウマいもの情報てんこ盛り「えん食べ」
ウマいもの情報てんこ盛り「えん食べ」 「えん食べ」は、エンジョイして食べる、エンターテイメントとして食べものを楽しむための、ニュース、コラム、レシピ、動画などを提供します。 てんこ盛りをエンジョイするのは こちらから

Hot Topics

IT Job

Interviews / Specials

Popular

Access Ranking

Partner Sites