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28歳と35歳を意識したキャリア・プランニング 〜経済評論家・ 山崎元の転職原論(4)

経済評論家 山崎 元
2011年9月30日 / 10:00
 
● 年齢とキャリア・プランニング

誰にとっても時間は有限だし、仕事を覚えるにも、さらに自分に向いた仕事を探すのにも時間が掛かる。時間を有効に使うためには、計画が必要であり、職業人生についてこれを行うのが「キャリア・プランニング」だ。

キャリア・プランニングには、個人差及び仕事の差が大きいが、重要なポイントは共通だから、ある程度パターン化することができる。今回は、筆者が典型的だと思う「転職もある職業人生のプランニング」の考え方を、主に年齢との関係を中心に説明したい。

● 28歳までに「自分の仕事」を選択

キャリア・プランニング前半の大きなイベントは「自分の仕事」を決定することだ。

学校を卒業して働き始めた時点で、自分はどの仕事が好きで、どの仕事なら向いているのかについて、納得感のある理解を持ってる人は必ずしも多くない。価値観や好み、学校での専門などを頼りにどこかの会社に就職しても、試行錯誤的であることは否めない。

しかし、他人に評価されるような仕事上のスキルを持つには、その仕事のための勉強や経験が必要であり、そのためには、自分の仕事の分野をある程度絞り込む必要がある。ここでいう「分野」は単に「商社マン」とか「小売り」といった大きな業種を指すのではなく、営業の仕事なら取扱商品も含めて、管理の仕事なら、財務とか、経理といったもう少し具体的な職種まで絞り込んだものだ。

たまたま自分が関わっている仕事に価値を見いだすことが出来て、そこで自分の人材価値を作り・育てることが出来るなら、その仕事を「自分の仕事」だと考えてもいい。しかし、仕事にやり甲斐が見いだせない場合や、異なる業界や会社に自分のやりたい仕事がある場合には、そこに転職して、その仕事に関わってみるのが有力な選択肢だ。

幸い、若い時分は新しいものへの適応力・学習力が旺盛だし、立場上も勉強がやりやすい場合が多い。転職を伴う試行錯誤をしながら、自分の分野を見つけることができる。
但し、「自分の仕事」といえるものを見つける試行錯誤にも、ある程度のタイム・リミットがある。思い切ってこのタイム・リミットを提示するなら、それは「28歳」だ。

理由は二つある。

ビジネスパーソンが最も能力を発揮し、その後の人材価値を確立する職業人生前半の実績を作ることが出来る時期は30歳代前半だ。この時期までに仕事を覚えて、この時期に存分に活躍するためには、仕事を覚えるために期間を「集中的な努力の下に2年」と見て28歳迄がコース選択の目処になる。これが第一の理由であり、最大の要因だ。

第二の理由は、正確なデータに基づくものではないが、人間はこの時期を境に「全く新しいこと」に対する学習能力が低下する場合が多いことだ。但し、こちらの方は、個人差もあるし、付随的な理由だ。

「28歳」は仕事の〆切のような厳密なものではないが、「全く新しい分野への転職が可能なのは28歳までだ」というくらいに考えて、それまでに「自分の仕事はこれだ」と言える分野のスタートを切っていたい。

● 35歳までに「人材価値」を確立

かつて、「転職年齢35歳限界説」と呼ばれる風説があった。35歳以前とその後では、求人の多寡や転職の難易度が大きく異なり、35歳を過ぎての転職は難しいというのがその趣旨だった。近年は、転職自体がポピュラーになったことに加えて、上司・部下の年齢逆転を昔ほどには気にしなくなったこともあって、35歳過ぎの転職も随分増えた。しかし、35歳までの方が転職の機会が多いことや、転職後の残り時間の問題を考えると、35歳くらいまでには、仕事での実績をある程度確立しておきたい。

キャリア・プランニングの第二の要点であると同時に、職業人生の大きな中間目標は、「35歳までに人材価値を確立すること」だ。ある程度の人材価値を確立すると、35歳を過ぎてからの転職の機会も増えるし、仕事上も能率がいい。35歳までに、ビジネスパーソンとして名実共に一人前になりたい。

● 「可能性」と「時間」を天秤にかける

仕事の選択にあたっては、「28歳」といわず、それより一年でも前に自分の分野を決定することが出来たら、その方が有利な面がある。仕事への習熟が早いと、少なくとも仕事で十分に活躍できる期間が長いし、少しでも若い頃の方が、仕事の知識の吸収が早いことが多い。

一方、早くに自分のコースを決めるということは、試す前に捨てる可能性が多いということでもある。自分でこれだと納得できる仕事になかなか出会えない場合に、別の機会をもっと試してみたいと思うことは少なくないだろう。

可能性と時間を天秤に掛ける状況には、職業選択の場合だけでなく、人生のあらゆる場面で直面する問題だ。残念ながら、万能の解決マニュアルがあるわけではない。

傾向として、これまでの経験と今あるものを大切にすべきだと思うタイプと試せるものは試してみたいと思うタイプの二種類の人がいるが(正確には、物事を自分で決められない第三のタイプもいる)、どちらがいいとあらかじめ決められるものではない。

筆者は「試したい」タイプだが、それでも、時間は有限で貴重な資源だと思うので、持ち時間を考えて諦めたものもある。

何れにせよ、自分の仕事は自分で決めると覚悟しておくべきだろう。

● 夢は10年単位、実行計画は2年単位

キャリア・プランを考える場合、どういった期間を意識するのがいいかは人によるが、筆者は、「長期的な夢は10年先」、「具体的な実行計画は2年単位」くらいが考えやすいと思う。もっと長い期間で考えてもいいのだが、状況は絶えず変化するので、私は、これくらいの期間が考えやすい。

仕事の内容にもよるが、集中的に2年間努力すると、ある程度の進歩が見えることが多い。新入社員も2年くらい鍛えるとかなり戦力になる。海外駐在の商社マンが言葉と土地柄に馴染んで本格的に働けるようになるのは赴任して2年くらい経ってからだという。筆者も、最初の転職で暫定的に職業を決めて、ファンドマネジャーの基礎を勉強するのに2年くらい掛かったという実感があった。

逆に言うと、2年間集中的に努力しても進歩が感じられない分野は、自分に向いていないのかも知れない。何かを試すときは「集中的に努力して2年」という単位で考えてみて欲しい。

● 補足:女性の場合

ここで典型的だと思って紹介したキャリア・プランは、女性にも当てはめることができるが、女性の場合、結婚と出産、特に出産を望む場合に、これをいつに持ってくるかが難しい。

近年、結婚・出産が後に延びる傾向がある。これは、キャリア・プラン的には自分の人材価値をしっかり確立してから出産・育児に時間とエネルギーを配分するという意味になる。これも一理ある考え方だが、高齢で出産を望むとチャンスが少なかったり、出産が可能になっても体力的な負担が大きい場合も多い。

筆者は女性でないので、実感を伴った意見を言うことはできないが、若い頃の方が体力的に無理が利くことと、若い頃の方が出産・育児で生じるブランクの機会費用(休職することの損失など)が小さい場合が多いので、出産を若い時点にもってくるプランにも考える価値があるように思う。

残念ながら、現状では、社会も企業も出産する女性に対して十分な配慮をしているとは言い難いが、出産と仕事の両立を望む女性については、上手くやって欲しい。心から応援したい。

【筆者紹介】
山崎 元(やまざき はじめ):経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員。58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

※この記事は、リクルートエージェントのウェブサイト「転職成功ガイド」に掲載された内容をjapan.internet.com 編集部が再編集したものです。リクルートエージェントの転職支援サービスについては http://www.r-agent.co.jp/ をご覧ください。


 
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