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Amazon の Android タブレット 「Kindle」 は、安くない

Mike Elgan
2011年9月29日 / 15:00
 
 
 
Amazon CEO Jeff Bezos 氏は、Android ベースのタブレット「Kindle」を驚異的な低価格で発売すると発表し、愛書家、ガジェット愛好家を狂喜乱舞させた。

最も安い読書専用の端末の価格はわずか79ドル。その他のモデルも思い切った低価格に設定されている。Kindle Touch は99ドル、Kindle Touch 3G が149ドル。最上位モデルのKindle Fire でさえたったの199ドルだ。これは、Apple iPad 2 の最も安いモデルより、さらに290ドル安い。

さて、確かに価格は安い。でも Kindle は本当は安くはない。安いと思うのは、Kindle を他のタブレットと比べているからだ。Kindle は、他のタブレット端末とは異なるビジネスモデルを持っている。

意味がわからない?では、説明させて欲しい。

あとで、ゆっくり払わされる



Gene Munster のアナリスト Piper Jaffray 氏は、Kindle Fire の販売価格は、製造原価よりも50ドル低く設定されていると見積もる。1台売るごとに、Amazon は50ドル損をするわけだ。私は、Jaffray 氏の見積もりは控えめにすぎると考える。製造以外のコストも加味すれば、赤字幅はさらに大きいはずだ。iPad の利益率が30%を超えるのとは対照的である。

だが、Amazon は慈善団体ではない。それどころか、Amazon は Kindle で大金を稼ぐつもりだ。

Amazon が Kindle を何百万台も販売できたのは、Amazon の価格戦略によるところが大きい。それは、携帯電話の販売代理店が携帯電話本体を安く販売する戦略と似ている。

行動経済学者によれば、商品の本当の価値を知ることが難しい場合、消費者は商品に対して価値以上の金額を喜んで支払ってしまうのだという。

新しい携帯電話を買うとしよう。本来は600ドルの携帯電話本体が、2年間の利用契約を結ぶことで200ドルで入手できたとしたら、あなたは400ドル安く買い物ができたのだろうか?そうじゃないことはみんな知っている。これから2年間にわたってその携帯に対し合計で1,000ドル以上も支払うのだから。携帯電話の本当の値段は毎月の通話料などに分散され、隠され、わからなくなってしまっている。

携帯電話が本体価格のみで販売されるようになれば、消費者は価格を比較するのがより簡単になるだろう。その結果、携帯電話には正しい競争の原理が働き、価格はもっと下がっていくはずだ。

でも、本体価格が利用契約料金と一緒くたにされてしまうことで、消費者には本当の価格が見えなくなってしまい、結果的には高額な代金を支払ってしまう。だから、販売代理店がこの抱き合わせ商法をやめることはない。

Amazon も同じことをしようとしている。あなたが Amazon の「安い」Kindle を買うということは、Amazon.com ショッピングサイトのレジをお金を払って買っていることになる。Kindle は、Amazon での買い物に最適化された POS システムだから。

読書専用バージョンの Kindle のことを考えてみよう。あなたがそれを購入する理由は何か?Amazon 独自の形式にフォーマットされた電子書籍を買って読むためだ。Amazon は、電子書籍の販売で、Kindle 販売の赤字をカバーしてきた。

(余談だが、Kindle 本体だけでなく Amazon の電子書籍の多くも、製作原価を下回る価格で販売されている。何のために?電子書籍の競合他社を叩き潰すためだ。

通常、このようなビジネスモデルでは、競合他社の撤退後に価格を上げそれまでの投資を回収する。だが、Amazon は電子書籍業界を支配した後も価格は上げないだろう。Amazon は出版社や著作者のコスト管理さえも可能だからだ)

Kindle Fire はどうだろう。このタブレットは音楽、映画、TV番組を Amazon.com サイトからダウンロードして楽しむために最適化されている。Amazon の app store からアプリをダウンロードして実行できるし、もちろん電子書籍も読める。

そして、Amazon はこれらのすべてから収益を上げることができるのだ。

Kindle には Amazon Silk と呼ばれる Web ブラウザが付属している。これを使用すれば、Amazon クラウドサービスに高速アクセスできる。もちろん、Amazon はこのクラウドサービスからも収益をあげる。

クラウドには、Amazon から購入したダウンロード可能コンテンツを保存できる。これは無料だ。だが、そのコンテンツを将来に渡って楽しみたいと思うなら、Amazon に忠誠を誓い、今後発売される新バージョンの Kindle を買い続けなければならない。

Kindle Fire には、Amazon プライムの30日間無料体験がついてくる。これは、何千人もの利用者をプライム会員へと誘うだろう。そして、Amazon プライム会員になった利用者は、それ以前と比べ2倍以上のお金を Amazon に落とすようになることがすでにわかっているのだ。チャリーン、チャリーン。

私の話が信じられない?でも、その人たちは、気付いているだろうか。Amazon タブレットにはカメラもマイクもついてない。他のタブレットには当然のようについているのに。つけなかった理由は?Amazon.com から商品を買う時にカメラやマイクは不要だからだ。Amazon は、コストカットのためと説明しているが、これは恐らく嘘だ。

Kindle はケーブルテレビのセットトップボックスのようなものだ



Kindle はただのガジェットではない。それは、Amazon との長期におよぶ利用契約の一部である。

興味深いことに、これは、Apple のビジネスモデルと非常に似ている。違いは、Apple は原価割れをしてまで物を売ったりはしないことぐらいだろう。Apple はハードウェア、アプリ、コンテンツ、その他すべてに高いマージンをのせて販売している。

Apple は高いお金を取れるプレミアムなブランド物を作り、その金額を支払える人々を呼びこむ。ただ、ビジネスの仕方そのものは似ている。iPad を買うことは、Appleとの長期利用契約を結ぶことだから。

これを他のタブレットの購入と比べてみよう。あなたがガジェットを買う。すると、そこであなたとガジェット製造企業との関係は終わりだ。

Kindle Fire、Apple iPad、他社のタブレット端末の購入は、それぞれケーブルテレビのセットトップボックス、Apple TV、テレビの購入に例えることができる。

Kindle Fire は、ケーブルテレビのセットトップボックスのようなものだ。ケーブル契約をすれば、ボックスは無料で設置してもらえる。やった!セットトップボックスば無料だぜ!......いや、それは勘違いだ。ボックス本体やその設置サービスの料金は、将来あなたが支払う「オンデマンド」映画などの料金に予め組み込まれているのだから。

Aple iPad は Apple TV と似ている。購入すれば、Appleとの長期契約を結ぶことになる。映画を見たらその料金も Apple に支払わねばならない。だが、ボックスは無料ではない。なぜかって?それは、Apple だからだ。

タブレット端末の購入は、テレビの購入と一緒だ。テレビの代金を支払い、ハードウェアを受け取る。それでメーカーとの関係は終わる。

こんなわけで、Kindle Fire と他のタブレット端末の価格を比較して「高い」「安い」と判断するのは全く無意味なことなのだ。Amazon と Apple だけが同じ土俵の上で勝負を繰り広げており、他タブレットはすべて全く異なったビジネスモデルで競争している。

皮肉なのは、ハードウェア販売では1台あたり50ドルも損をする Amazon のビジネスモデルが、ハードウェア販売自体で利益を得ようとする一般的な Android タブレットのそれよりも巨大な利益をもたらすということだ。

さて、あなたは私が Amazon を嫌っていて攻撃を加えているのだと思ったかもしれないが、それは間違っている。私は、最低でも1台は Kindle を買う予定だ。たぶん、あなたもそうなんじゃないか。 Kindle は素晴らしいデバイスだし、買うことで Amazon に縛り付けられることになったとしても、それは私にとって望ましいことだ。

また、Amazon はフェアな企業でもある。あなたが Kindle を買ったとしても、その後 Amazon とは一切関わらないという道を選択することもできるのだから。

だが、その場合でも Kindle は安くはないことを忘れてはいけない。確かに、あなたにとっては安い。だが、その安さは、他の Amazon 利用者の支払ったお金によって実現されている。

Kindle の価格はコストを基に計算されたものではない。経済心理学を基に、人々が「良い買い物をした」と感じるレンジでの値付けとなっている。実際、あなたは今後 Amazon に対して長期にわたって支払い、支払い、支払い、そして支払い続けるという恐ろしい契約に魅力を感じているのではないか?

Amazon の天才的な洞察力に拍手をおくろう! Kindle を買って、楽しもうではないか。

だが、Kindle が安いデバイスではないということだけは、心に刻んでおこう。
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