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事例から見る中国の EC ビジネス市場

株式会社クララオンライン 家本賢太郎
2011年5月30日 / 10:00
 
 
前回までは3回に渡って台湾の EC 事情について触れてきました。本コラムでは「中国・台湾ネットビジネス情報最前線」とのタイトルの通り、対象エリアは台湾だけでなく中国もカバーすることにしています。そこで、今回は一度台湾を離れ、中国上海の EC・カタログ通販事業者で、日本製品を中国で販売して収益を上げている実際の成功例を見ながら、中国 EC 市場への参入方法について考えてみたいと思います。

今回取り上げるのはビーナスベール(http://www.venusveil.com/)という会社で、中国上海を拠点に展開する EC・カタログ通販事業者です。2008年に設立された同社は、日本の大手商社や通販会社の勤務経験がある伊藤社長の下、約40名のスタッフによって自社でフルフィルメント(受注・保管・配送・代金回収の一連の流れ)を構築されています。

取り扱っている商材は日本メーカーが企画したものに特化しており、中でも女性用の下着が軸となっています。特にビーナスベールは設立時からセシールとの提携関係を構築し、日本国内で配布されているセシールのカタログの中から中国で売れるとビーナスベールが見極めたものを中国で展開する、という戦略をとってきました。カタログは80万部近くを上海と近隣の省で直接配布し、さらに最近では中国で発売されている女性ファッション誌に挟み込んで配布するなどしてリーチを確保しています。これに対し、EC は自社サイトでの販売と淘宝网(タオバオ)、楽酷天(中国の楽天)のインターネットショッピングモールへの出店を行っています。同社へのヒアリングによると、淘宝网での売上比率が圧倒的に高いとのことです。日本では最大級の楽天ですが、中国では苦戦を強いられているようで、ビーナスベールの事例からも中国に浸透しきれていない様子がうっすらと伺えます。

「ビーナスベール」TOP ページ

淘宝网(タオバオ)にあるビーナスベールのショッピングモール

「ビーナスベール」TOP ページ
*クリックして拡大
淘宝网にあるビーナスベールのモール
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客観的な外部視点で見ると、ビーナスベールの一つの特徴はカタログ通販とオンラインでの EC 販売のハイブリッドにあります。いわゆる20代から30代前半の若い女性、即ち F1層はインターネット経由でのオーダーが多く、その上の世代である30代後半から40代の女性、F2層はカタログを見てコールセンターに電話をかけ、代金引換で支払いをする注文が多いといいます。中国では年齢層ごとの購買指向に違いがあることが以前から指摘されており、この違いをカタログ通販と EC を利用することによってうまくカバーしていると言えます。

配送業者との連携も中国の通販事業の運営では要となります。中国では、日本のように全土を一社がカバーしている物流システムは EMS 以外には無く、ビーナスベールでは信頼できる配送業者を、その配送業者が強みをもつ方面に応じて使い分けるという工夫でコストとトラブルを抑えているようです。配達までの日数ですが、上海市内や周辺であれば概ね翌日、国内主要都市では数日、内陸部でも1週間程度で商品の配達が出来ているとのことです。

また、配送業者に代金引換での支払いを委託するにあたっては、デポジット(保証金のような性格)を取るという方法もあるそうです。地方への配送の場合、複数の配送業者を介在させる必要があり、代金引換のお金を無事に回収しても、最終的に発送元に商品の代金が入金されるまでに時間がかかってしまう点がネックといえます。この点についてはデポジットを取る工夫によってリスクを軽減しています。なお、台湾では活躍していた日系の配送業者(ヤマト運輸や佐川急便)は、現在のところ上海を中心にサービス展開をしていますが、配送可能な地域が限られていること、コストがローカルの業者と比べて高いという点から通販事業での全面的な採用には各社とも至っていないようです。

そして、ビーナスベールのカタログのもうひとつ興味深い点は、もともとビーナスベールが中心としてきた女性用下着以外に、日本のお茶、化粧品、雑貨なども紹介されていることです。これは、日本から中国国内市場向けの通販に進出したいものの、単独では最初から物流や決済などの機能を持つことが出来ない企業や商品のために、ビーナスベールがカタログという「場」を提供しているものです。通販のフルフィルメントが揃っていることを同社のポイントとしてあげましたが、コールセンターを自社でもっていること、経営陣の長年の経験による中国の事情にあわせた ERP システムを持っていること、上海に委託在庫も含め自社で在庫用倉庫を持っていてスムーズに発送できること、などはいずれも中国に進出したい日本企業にとってはどれもゼロから立ち上げるには大変なものばかりです。

近年、日本企業の中国 EC 市場参入への取り組みの代表的なケースは、まず淘宝网に店を出し、物流は日本または香港からというのが一つの流れでもありました。しかし、より競争力を持つためには中国国内に物流を持つことや、決済方法も多様化させることが鍵になります。今後は、ビーナスベールのような通販機能を全て揃えた企業に委託することで中国事業の足がかりを作る、というケースも中国市場進出の新たな選択肢となりそうです。

(執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎)

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