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iPhone vs Android vs SymbianOS。モバイル三国志の現状と未来予測

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
2009年10月22日 / 12:30
 
 
「Web セクターの最新トレンドは『モバイル』『ソーシャル』『リアルタイム』で、そのリーダーがそれぞれ iPhone、Facebook、Twitter である。またこの3大トレンド『ゴールデン・トライアングル』を連係したサービスが今後の Web をリードする」 2009年10月11日に Blog で記事化された Seeking Alpha の Fred Wilson 氏の見通しだ。

その直後の10月20日、サンフランシスコでの Web2.0サミットにおいて、モルガンスタンレーのアナリスト Mary Meeker 氏が「最新トレンド『モバイル』の成長インパクトは極めて大きい」との発表を行い、その的確なプレゼンピッチが今も世界中の Blog メディアを駆け巡っている。

Mary Meeker 氏の発表
Mary Meeker 氏の発表
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同氏は、iPhone/iPod は世界史上最速で成長したハードウェアであり、これから来る「モバイルウェブ」の潜在市場規模を「PC ウェブ」の10倍ないしそれ以上と見積もっていると述べた。

モルガン・スタンレーのメアリー・ミーカーが語る「経済は回復の見通し、モバイルは急成長、iPhone は驚異」(TechCrunch、2009/10/20)

「モバイルウェブ」の潜在市場規模
「モバイルウェブ」の潜在市場規模
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実際に iPhone の伸びは凄まじい。このチャートにあらわされているのは、発表後わずか3年で5,700万台まで成長し、さらに加速を早めている iPhone/iPod の様子だ。中でも通信機能を持つ iPhone は飛ぶ鳥を落とす勢いで、そこに死角は見当たらないように見える。

■Android 旋風が巻き起こる
そんな華々しい iPhone 成長の影で、Google は虎視眈々とモバイル市場制覇のための布石をうち続けていた。

2009年10月6日、大手調査会社のガートナーが「2012年には Google のモバイル OS である Android が iPhone を逆転し、SymbianOS についで第二位のシェアになる」との予測を発表し、iPhone の圧倒的な成長を肌で感じていたモバイル関連業界を大いに驚かせた。

Android to grab No.2 spot by 2012, say Gartner(ComputerWorld、2009/10/6)

続く10月15日には、Google の決算発表において CEO の Eric Schmidt 氏が「Android への普及は爆発的大普及の直前だ」と宣言し、最大級の自信をみなぎらせたのだ。

Android の世界的普及は今ビッグバン寸前だ! Google の CEO が声高らかに宣言(TechCrunch、2009/10/16)

さらに10月17日、追い討ちをかけるように、Android2.0をベースにし、スペックで iPhone 3GS を上回ると噂される最強の Android 携帯「Droid」が Motorola から発表され、Android ファンを熱狂させた。携帯キャリアは米国で iPhone の AT&T に肉薄するチャレンジャー Verizon だ。

Droid 登場―Verizon、Motorola、Google 連合軍の Android 携帯が iPhone に挑戦状(TechCrunch、2009/10/19)

Droid のティーザー CM では iPhone に対する強烈なライバル心が表現されており、そのインパクトのため YouTube でもバイラルしはじめた。

Verizon,『Droid』発売前のテレビ CM を開始し『iPhone』に対抗 (japan.internet.com、2009/10/20)

しかも Droid だけではない。Android 24機種が世界中で出荷を待っているとの TechCrunch 記事が発表されるにいたり、自信あふれる Google 経営版の発言の裏づけともなり、Android への期待感が最高潮に達してきている。

各社 Android 機の世界的大洪水始まる: 全機種の仕様を表にまとめました

■世界シェアにおける iPhone と Android
では、ここで実際の世界シェアはどうなっているか、前述モルガンスタンレーの発表資料より見てみよう。

世界におけるモバイルのシェア
世界におけるモバイルのシェア
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モバイルでは「携帯電話機としての普及台数」と「ウェブへのアクセスシェア」という視点の異なる指標がある。全社は携帯電話、後者はスマートフォンとしての指標であるが、電話市場はすでに成熟しているためこれから重要なのは後者の Web アクセスだ。

ここで注目されるのは SymbianOS が「台数」ベースで49%と過半シェアを持つにもかかわらず「ウェブアクセス」では iPhone が65%と圧倒的している点。一方の Android も地味ながら SymbianOS を凌駕して急成長していることが見てとれる。

つまり電話としてのシェアが高い SymbianOS、スマートフォンとして最大シェアを持つ iPhone、それを追いかける成長株 Android という三国志の構図が浮かび上がってくるのだ。

■Android が iPhone を逆転するシナリオ
ここからは筆者の見解だが、今後の iPhone と Android のシェア争いを占う意味で、重要な天王山は3つあると考えている。

ポイントその1「Android 互換性の確立」
iPhone の勢いは凄まじい。すでに機種としても OS としても三代目に入り使い勝手も完成の域に近づいている。またアプリも6.5万を超え、広くユーザーに親しまれている。

他方、Android においては登録アプリ数では1万を超えたようだが、ダウンロード数などでは iPhone に遠くおよばない。

目先のシェア争いで最大のキーとなるのがこのアプリだろう。つまり Android がオープンソースを武器に、この逆境を跳ね返せるかが焦点となるが、当面は機種ごとのアプリ互換性不備が障害となる可能性が高い。なぜならモバイル機器は PC と異なり、メーカー間の機能競争のためハードウェア仕様が多様化していくのが必然の流れであるからだ。

すでに Android デベロッパーから互換性に関する不満が噴出している。一機種で多くの収入が見込める iPhone 以上に魅力的なプラットフォームに成長させられるか、Android にとって最も険しいハードルになるだろう。

決め手となるのは、Android 陣営に iPhone と比肩しうるシェアを獲得するリーダーシップ機種が生まれるかどうかではないだろうか。例えば Droid だ。仮に Droid が大ヒットすれば、多くのデベロッパーが Droid アプリを率先して開発しはじめ、他の Android 採用メーカーもアプリ装備のため Droid 拡張仕様を取り入れる可能性が高い。このように早い時期にデファクトスタンダード仕様を確立できるかどうかが第一のポイントとなる。

ポイントその2「Google Voice の脅威」
もう一つ見逃せないのは、Google が普及させつつある「Google Voice」だ。これは iPhone にとっては最も恐ろしいキラーウェポンであり、彼らが市場の避難を浴びながら Google Voice を iPhone 上から排除しようとしているのは必然といえるのだ。

具体的に説明しよう。Google Voice は、Google が提供する音声通信統合プラットフォームだ。例えばあなたが Google Voice に登録し、Google 電話番号を得れば、後は生涯にわたって Google が電話を最適処理してくれるというサービスだ。

相手がその番号に電話すれば、携帯電話や家の電話、必要あらば職場の番号にも同時に呼び出し音がなる。留守だった場合でも完璧だ。Google Voice は録音されたメッセージを自動的にテキスト変換し、あなたの望むメールに自動報告してくれるのだ。通信キャリアを変えても登録を変更するだけで番号をかえる必要はない。しかも国内通話料は無料、海外通話も Skype よりも格安になるという驚きのサービスなのだ(現在米国のみで提供中)。

ここで大切なのは、Google Voice がネットワーク外部性(ユーザーが増えるほど利便性が乗数的に増す特性)を持ったサービスだということだ。SymbianOS は電話、iPhone はインターネットというすでに成熟期に達したインフラ上を活用しているだけの端末であり、クリティカルマス(もしくはキャズム)といわれるシェア16%を超えても、常に後発に逆転を狙われる立場には変わりがない。

しかし Android は Google Voice というキラーソリューションを持っているため、首記ガートナーの予想通り成長し続けた場合、2012年以降には他の端末が追従できない爆発的な成長をするだろう。またその場合は Google Voice が世界中に浸透しているため、その後の他社によるリプレースは極めて困難となる可能性が高いのだ。

iPhone も当然その点は意識して戦略を練っているだろう。あくまで独自に Google Voice 対応ソリューションを打ち出すか、AT&T などキャリアと連係するか。世界の個人情報を集約しつつある Facebook と組んで Google 包囲網を築く可能性すらあるかも知れない。ただしその手が遅れると、マッキントッシュ vs AT 互換機の時と同様、オープン化の流れに駆逐されることになりかねない。

ポイントその3「Android と NOKIA/SymbianOS と統合」
Apple と Google による派手なスマートフォンウォーズが注目を集めているため影に隠れる形になっているが、搭載台数ベースでは49%のシェアを持つ SymbianOS の存在は大きい。日本でも FOMA ベースの富士通、三菱電機、シャープなどに採用されており、特にアジアとアフリカでは圧倒的なシェアを持っている。また SymbianOS のバックにいるのは携帯メーカーとして世界最大の影響力を持つ Nokia である。

AdMob の2009年8月最新資料
AdMob の2009年8月最新資料
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この図は、先のモルガンスタンレー資料の参照元のひとつ(真ん中の緑の棒グラフ)でもある AdMob の2009年8月最新資料から引用したものだ。これによると、携帯メーカーとしては iPhone が27%、Nokia が24%と、二大メーカーであわせて50%を超えていることがわかる。

つまり今のメーカー勢力図が維持された場合、Android がいかに Google Voice を切り札にシェアを伸ばそうとも過半数に満たないわけだ。そのため Google は独自スマートフォンを市場投入し iPhone を追撃するという噂もあるが、最も現実的な選択肢は共にオープンソースである Android と SymbianOS の統合だろう。

仮にこの統合が実現すると、最下層のレイヤーである携帯キャリアの力は弱体化するとともに、第二階層の携帯メーカーとしては Nokia、第三階層のアプリは Google Voice が最大勢力となり、Nokia、Google ともに大いにメリットを享受できることになる。

昨年も某アナリストによる統合観測がモバイル市場をにぎわしたが、いずれにしても Google Voice の影響力が業界再編のトリガーとなることが予想される。また仮にそうなった場合、iPhone vs Android の成り行きに決定的な影響をおよぼす可能性が高い。

■互換路線 vs 独自路線
ディファクトスタンダードが至上命題となる IT 業界において、独自路線(クローズ戦略) vs 互換路線(オープン戦略)は永遠に繰り返される対決構造だ。

日本においてもしかり。パソコンの歴史を紐解くと MSX vs PC88では独自路線の勝ち。DOS/V vs PC98では互換路線の勝ちだった。最近では mixi、モバゲー vs GREE のソーシャルゲームウォーズがそれに該当する。

最激戦区のモバイル市場は、メインプレイヤーである iPhone(Apple)、 Android(Google)を中心に、Symbian(Nokia)と Windows Mobile(Microsoft)が凌ぎを削る現代の三国志だ。

iモードで世界のケータイを先導していた日本のプレイヤーがいつの間にか後塵を拝しているのは寂しい限りだが、これからはじまる壮絶な合従連衡の動向を、IT 業界の一員として興味深く見守っていきたい。

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執筆:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
監修:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
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