「FarmVille」の快進撃がとまらない。1か月ほど前の調査で競っていたライバル「Farm Town」などとも圧倒的な差をつけ、9月7日時点で月間アクティブユーザーは3,770万人と前代未聞のスケールとなった。

広告収入と直結するデイリー訪問者においては、2位にダブルスコア以上の差をつけた1,360万人となっている。さらに、この規模となっても一直線に成長を続けているから驚きだ。

Facebook アプリ・ベスト10 および FarmVille 月間アクティブユーザーの推移 by AllFacebook at 2009/9/7
Facebook アプリ・ベスト10
および FarmVille 月間アクティブユーザーの推移
by AllFacebook at 2009/9/7

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前回のコラムで、Facebook アプリの中でも最大の成長株が「ソーシャルゲーム」という分野で、さらに一番ホットなテーマが「農場育成系」であると記した。

今回は中でも最強を誇る「FarmVille」にフォーカスし、ゲームとしての成功の秘訣、さらにビジネスとしてのマネタイズの秘訣を探っていきたい。

なお「FarmVille」の具体的なゲームの内容や特性については、こちらの「ソーシャルアプリ.jp」にとても緻密な解説がされているので、ぜひ参照してほしい。
 
・ソーシャルアプリ.jp「月間 MAU が3,000万人超の Facebook アプリ『FarmVille』はここが優れている」

■FarmVille とは?
いわゆる農場系で、自らの畑で農作物を植え、収穫し、コインを得るという、いたってシンプルなストーリーのソーシャルゲームだ。日本では GREEの「ハコニワ」が近い。

FarmVille
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いろいろなタイプの「農作物」があり、収穫時の売却価格や育成タイミング(野放しにするとすぐに枯れる)が異なる。基本的には自分がアクセスできる頻度、つまり一日一回であれば、そのぐらいで収穫できる「農作物」を選んで育てていく。

ちなみに FarmVille の場合、育成については単純で、手間をかけなくても時間がたてば自動的に育っていき、収穫しゴールドを得るというプロセスを繰り返す。ただし、しっかり定期的にリピートしないと枯れてしまうのでユーザーの記憶に残り続けるわけだ。

「農作物」とは別に、「木」や「動物」があり、これらはギフトとして他のユーザーにプレゼントできる。ギフトをもらうとよりスムーズにゲームを運べるようになるため、一日一回できる友人とのギフト交換がゲーム運びに重要となる。またレベルによってトラクターなどの「機械」を得ることができ、それがマンネリ打破の良いアクセントとなっている。

レベルアップには、コツコツと自ら耕す方法と、「友人にギフトを贈る」「友人を招待する」など友人を巻き込む方法があり、後者のほうが確実にポイントが高い。ここがまたキーポイントだ。

■FarmVille に学ぶ「ソーシャルゲーム成功の秘訣」
FarmVille は突出したアイディアやクオリティで大ヒットしているわけではなく、ソーシャルゲームのならではの「ゲームのルール」に極めて忠実に開発されている。

前回のコラムで提示した4つの黄金律をもとに、FarmVille 内に散りばめられた成功のエッセンスを抽出してみよう。

1.コンテンツの価値は、そのクオリティより「友人」や「同好の人々」との情報共有、体験共有にある。
・友人とギフトを交換し助け合う。
・友人の畑を往訪したり、共同作業ができる。
・友人とボーナスをシェアする。

2.多くの人の目に繰り返し触れるために、「クチコミ・ドライバー」をゲームに組み込む。
・新しい友人にゲームを紹介すると最短距離でレベルアップできる。
・ウォールに表示された友人のアクティビティをクリックするとボーナスをシェアできる。

3.定期的に訪問してもらうために、「リピート・ドライバー」をゲームに組み込む。
・定期的に訪問し、収穫しないと枯れてしまう。
・一日一回、友人にギフトをプレゼントできる。(一日の最初のアクセスページがプレゼントページ)
・レベルがあがると新しいアイテムを得られるなど、飽きさせない工夫が絶妙のタイミングで仕込まれている。

4.収益のキーは仮想通貨。「バナー広告」ではなく「アフィリエイト広告」と「マイクロペイメント」の有効活用だ。
・仮想通貨(Coin)を活用。アイテムなどにより仮想通貨獲得二ーズを演出する。
・直接購入(マイクロペイメント)するか、オファーされた行動をとる(アフィリエイト広告)により仮想通貨は獲得できる。

■ソーシャルアプリにおけるマネタイズのキー
ソーシャルアプリにおけるマネタイズのキーとなるのは「パナー広告」ではない。なぜならソーシャルアプリのプラットフォームである SNS 自体のバナー広告効率が極めて悪いからだ。

ネット媒体の CPM 比較
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(注1)
CPM=Click Per Mille(1,000回表示あたりの広告費)
CPC=Cost Per Click(1回クリックあたりの広告費)
CTR=Click Though Rate(クリック率)

(注2)Google 社広告のクリック単価とクリック率は、2008年米国業種別広告比較/2009年 TechCrunch 記事から引用

(注3)Yahoo/mixi/Facebook の広告単価については、各媒体最新資料から抜粋

・Yahoo(PC)…トップバナー(224*50pixel)、想定表示回数750万回、480万円(1週間掲載)

・mixi(PC)…トップバナー(468*60pixel)、想定表示回数2,000万回 、100万円(1週間掲載)

・mixi(モバイル)…au 版トップバナー(192*53pixel)、想定表示回数270万回、90万円(1週間掲載)

・Facebook…ユーザー設定タイプで、CPM/CPC 選択可能。値は米国推奨値を基準

(注4)米国広告費(Google Adwords/Facebook US)は、1ドル=94円として換算

Yahoo! や Adwords などにおける一般的な CPM(1,000pageView あたりの広告費)が600円程度であるのに対して、mixi(PC 版)や Facebook は50円程度だ。mixi アプリでは開発者ランクによって、この広告収入を10〜50円のレンジで還元するが、これではいかにアクセスを稼いでも儲かるレベルには達しない。では、Facebook アプリはどのように稼いでいるのか?その答えが「アフィリエイト広告」である。

FarmVille
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例えば、このように FarmVille で仮想通貨が足りなくなると、仮想通貨を購入するか、オファーされた行動をとるかの選択肢が表示される。ここで多くの人は行動、つまりアフィリエイト広告を選択することになる。

例えば、最も稼げると有名な Offerpal Media 社の例をあげると、指定されたオンラインカジノへ登録すると700〜1,000円相当、ダイエット系食品のフリー申し込みをすると200〜300円相当の仮想通貨をユーザーは獲得できるわけだ。

これは GREE やモバゲーのアフィリエイト広告と類似したものだ。例えば GREE を例にとると、無料クレジットカード登録で1,000円相当、FX 口座開設で2,000円相当のゴールドを入手できる。GREE やモバゲーが mixi と比較して明らかに高収益な一つの理由はここにある。

Facebook/mixi/モバゲータウン の対比図
Facebook/mixi/モバゲータウン の対比図
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この図で、mixi の赤くなっている「課金・広告インフラ」部分がキーとなる。Facebook ではこのインフラ部分までオープンとなっており、多数の業種が参入し、サービスを競っている。

例えば先ほどの Offerpal Media 社は、CPM あたり平均7,500円と驚異の収益効率をアプリ業者に提供している。この数値は mixi アプリ還元の平均値25円と比較して30倍のコストパフォーマンスとなっており、一般ネット広告と比較しても極めて収益効率が高いと言える。

今後、mixi アプリが儲かるか否かは、この「課金・広告インフラ」をどのタイミングでオープンにするかにかかっているだろう。また PC と比較して CPM が高い mixi モバイルで、どの程度を開発者に還元するかに注目したい。

その点、最近オープン化を発表した「モバゲータウン」はすでにグループ会社に「ポケット・アフィリエイト」があるため、儲かるソーシャルアプリプラットフォームとしては先行する可能性もある。

Facebook の課金広告インフラ業者一覧
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■ソーシャル・アプリ開発者へのおすすめ
mixi アプリは基本的に OpenSocial に準拠しており、世界第二位の SNS、Myspace への移行が容易だ。

Facebook は独自言語(FBML)と API を持つが、移植自体はそれほど困難ではない。またモバゲータウンも OpenSocial への対応移行を表明している。このようにソーシャルアプリは多様なメガ SNS に移植することで旨みが出てくる。

したがって、日本語環境で、かつ最も競争の少ない mixi アプリでまずヒットを狙い、続けて Myspcace、Faceobook と移植し、儲かる課金広告インフラをベースに収益を上げるのが効率的なステップではないだろうか。

なお、今回ご紹介した Facebook の課金や広告インフラについては、当社副社長の福田が執筆する来週のコラムで具体的な内容を紹介する予定なので、そちらをぜひご参考いただきたい。

筆者 Twitter はこちら。ご意見、コンタクトなどお気軽に。ゲーム分析をした当社社員の岡村健はこちら

執筆:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
監修:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造