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中国〜台湾間の直接往来が間もなく解禁へ 注目される台湾 IT 産業―Part 4

EMS One
2008年12月19日 / 13:50
 
 
●「三通」により台湾 IT 産業の構造調整が進む

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が2007年に発表した世界 IT 産業競争力に関するレポートによると、調査対象の64か国・地域の内、台湾はスウェーデン、デンマーク、ドイツを抜いて第6位にランクインした。第1位〜第5位は、それぞれ米国、日本、韓国、イギリス、オーストラリアとなっている。

中国、香港、シンガポール、それから近年に IT 産業で急速な発展を遂げたインドは、それぞれ49位、21位、11位、46位であった。韓国 Samsung 経済研究所は2008年3月に、「台湾 IT(ハイテク)産業はすでに世界の強豪入りを果たし、韓国を脅かす存在となっている。韓国は、台湾 IT 企業が韓国主力産業分野への進出速度を最大限に緩め、両者の開きを大きくする方案を制定する必要がある」とするレポートを発表した。これは何を意味しているのか。

第一に、台湾はすでに世界 IT 産業でトップ集団に入っていること。

第二に、台湾企業の成長が主要ライバル各社からの高い注目を集め、今後は外部からの厳しい競争圧力に晒されることである。台湾が今後もトップ集団で居続けるためには産業構造の改革、資源の最適配分、産業の更なる高度化を早急に進める必要がある。「三通」はこれらを達成するためのカンフル剤となるだろう。

日本などの先進国が科学技術分野においてトップ集団を保ち続けている主な理由の一つとして、旧態産業の海外移転を進めることによる国内産業の高度化があげられる。台湾も同様の問題に直面しており、産業構造の調整をせず、競争力の劣った産業の移転を進めなければ今後の台湾経済の発展・産業競争力の向上・賃金上昇は困難なものとなるであろう。

また、生産・技術移転については、完全に旧態化した産業に止まらず、今後の市場趨勢を睨んでより先進的な領域に踏み込む必要がある。実際、Intel や ST Micro などの半導体大手はすでにアジア最大の研究開発センターを上海に構えており、その規模は急激に拡大している。Intel を例に取れば、第2期工事がまもなく完了し、続く第3期工事もこれから開始される状況である。

台湾当局は現在、台湾企業が中国に8インチウエハー工場を建設するにあたって様々な規制を設けているが、これによって台湾企業は台湾内での12インチウエハー工場のさらなる拡張に消極的となっている。

理由は、次世代技術が実用化された時点で移転しても、競合との競争力を保てないからである。ここ数年来、台湾「ファウンドリー大手2社」と称される TSMC(台積電)の張忠謀董事長と UMC(聯電)の曹興誠名誉会長は、台湾当局に対して中国での8インチウエハー工場投資を開放するよう呼びかけてきた。

両氏は、「世界トップ集団の地位を維持している台湾ファウンドリー産業が中国で発展を図らなければ、5〜10年後にライバルに追い抜かれることは必然」と考えているからである。今後台湾企業は、低付加価値産業・労働集約型製造業・資源消費型産業のさらなる中国シフトを推進するだけでなく、さらにレベルの高い領域の移転を進めてくると思われる。一方、台湾内では IT 産業の高度化を推し進めるために高付加価値産業・ハイテク研究開発分野の強化を進める。「三通」によって、この選択が更に現実味を帯びてくるはずだ。

代表的な台湾企業の動き
代表的な台湾企業の動き
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● 中国・台湾が IT 関連標準制定と国際競争において緊密な提携を推進

台湾 IT 産業は世界的に見ても強大な受託生産能力、高度な半導体産業、生産管理・製造管理・市場開拓・技術革新分野での豊富な経験を有している。例えば、TSMC(台積電)と UMC(聯電)は世界最大のファウンドリ企業であり、また世界の90%近くのノート PC、50%の PC ディスプレイ、60%以上のマザーボードが台湾企業によって製造されている。また、研究開発分野においても台湾が毎年 IT 産業に投じる資金は、ヨーロッパ全体のそれを上回っている状況である。しかしこれでもなお、日増しに利益が減少している下・中流産業チェーン中心の台湾 IT 産業は、そのポジションから抜け出すことが困難である。

この理由として、台湾 IT 産業が自ら中心となって参画した業界標準や国際標準を持っていないことがあげられる。例えば、台湾が産官学揃い踏みで推進している WiMAX などもその典型だが、WiMAX の要素技術の殆どは米国に握られているのが実情だ。このため、いくら良い製品を開発しても、膨大な特許料の支払いが常につきまとう。

現在および将来の IT 産業競争においては、標準化獲得競争が最も重要な要素となっている。標準を掌握したものが産業チェーン全体を手にしてそのチェーン全体の頂点に立ち、相応な利潤と産業の支配権を握る。そのため、台湾 IT 産業は一刻も早く現在の状況を打開するべく、中国との緊密な提携を展開することで成果を上げようと考えている。

例えば通信領域における TD-SCDMA は、中国が唯一知的所有権を有する 3G 規格であり、中国電信業が欧米電気通信標準の独占状態を打破するための突破口と見られている。台湾通信チップ最大手 MediaTek(聯発科)はすでに TD-SCDMA 技術推進の先頭に立つ中国の大唐電信と TD-SCDMA チップ開発での協力を展開している。

さらに、今後はより多くの台湾系 IC 設計企業が TD-SCDMA 分野への進出を行うことが予想されている。同時に、今後爆発的な発展が期待されているデジタルテレビ、IP テレビ分野の標準策定においても、台湾企業は中国の関連企業との共同開発を推し進め始めている。

中国・台湾の IT 産業 SWOT 分析
中国・台湾の IT 産業 SWOT 分析
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● 総括:「三通」以降に起こる、中国・台湾 IT 産業チェーンと産業体系の重大変革

上述したように、台湾総統選で馬英九氏が当選したことによって、両岸の経済関係は大きな転換期を迎えることとなった。そして現在最も注目されているのが「三通」の実現であり、実現の暁にはこれまで以上に両岸での経済結びつきが強化されることは間違いない。特にハイテク分野での投資規制解禁が行われれば、台湾経済の中枢ともいえるパネル産業、半導体産業での大規模シフトが行われる可能性がある。パネル生産では低世代が中国へ移管される可能性があり、半導体では8世代以下のウエハー工場が短期間の内に移管されると見られる。また、IC パッケージテストも同様に中国へ移転すると思われる。その他、MediaTek を筆頭に、各 IC 設計会社が中国での研究開発センター開設に動くと見られている。

EMS/ODM/OEM 分野は、台湾にある生産能力は最終的に中国またはその他の新興市場地区に移転される見通しである。これの意味するところは、IT 産業の核心技術の研究開発が次第に台湾 IT 産業の中心となっていく、ということである。

「三通」前後の IT 産業の動き
「三通」前後の IT 産業の動き
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記事提供:EMS One
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