自分を表現したい人、それを応援したい人のためのソーシャルネットワーク「posh me!」が8月15日にオープンした。運営は7月に業務を開始したばかりの株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ。動きの激しい“ソーシャル業界”にあえて参入する二人の代表に話を伺った。

山崎徳之氏(左)、羽田寛氏

元ライブドア役員2人の“ゼロスタート”
ゼロスタートコミュニケーションズの中心となる社長の山崎徳之氏と副社長の羽田寛氏は6月まではライブドアの役員だった。その縁で同社には現ライブドア副社長の伊地知晋一氏も専務取締役として参加するほか、ヤフーで新規事業を担当してきた佐藤完氏や、管理担当で上場請負人の友田剛司氏、元アミューズの佐野日出男氏、元東宝の小島不可止氏など、各業界のスペシャリストが役員に名を連ねる。

同社はソーシャルネットワーク事業を中心に、コンシューマー向けの自社メディアである「posh me!」と、それを応用した対法人向けソリューションを両輪とする。投機性の高い B2C を堅実な B2B で支えるというのは、ライブドア事業が立ち上がる以前のオン・ザ・エッヂにも共通する戦略だ。

羽田氏は誇らしげに言う。「我々はマッシュアップ企業。posh me! は、山崎の技術に、私の営業力、伊地知のネットプロモーション、佐藤完の人脈、友田のファイナンス、佐野の音楽、小島の映画などを混ぜ合わせてできたビジネスモデルです」

ソーシャルネットワークに自己顕示欲を結集させる
posh me! は、ソーシャルネットワークを活用して、プロのアーティストを目指す素人を、一般ユーザーが支援・育成するサービス。プロになりたいユーザーは自分をプロデュースして夢を叶え、それを応援するユーザーは自分の目利きとしての目を確立する――。これら2面の自己顕示欲をソーシャルネットワークで繋ぎ、自己実現型サービスを提供する。

特徴は、ユーザー間の交流や作品のマッシュアップを狙える点だという。個人ユーザから投稿されたコンテンツをベースに、投稿(posh)する人と、それを応援する人が協力関係を持ち、作品のメジャー展開を支援していく。

8月15日にスタートしたβ版では、第一弾サービスとして写真の投稿評価のサービスを提供する。自分自身の写真や、自分のペットなどの写真を公開し、ユーザーからの投票という形で反応や意見を集めることができる。集まった投票結果を元にランキングが作成され、ランキング上位者にはメジャーデビューのきっかけとなるステップアップキャンペーンを開催していく。

その他のカテゴリは順次公開予定。とりあえずは写真を見て投票するだけという手軽さで、posh me! というサイトの特徴を啓蒙する考えだ。また日記や Blog の公開、コミュニティ機能、メッセージ機能などの一般的なソーシャルネットワーキング機能やモバイル完全対応なども9月末に開始予定。さらに今後は IP 電話機能やメッセンジャー機能も実装されるという。

「posh」という言葉は「おしゃれに見せる」「めかしこむ」という意味。服や髪型、化粧でちょっと上乗せするといった感覚だ。

「スターになりたいとか自己 PR したいという自己顕示欲は永遠に続く。Web 2.0というユーザーが参加する Web の使い方の中で、ユーザーは自分のプロフィールをある程度明かして堂々と批評している。そして褒められたり、賛同されることに快感を覚え始めている。これは僕に言わせれば、ある意味形を変えた自己顕示欲。それは Blog もアマゾンのレビューも同じ」(羽田氏)

posh me! 事業は、プロとなったユーザーが生み出す作品の権利を収益とする。カテゴリとしてはタレントをはじめ、サウンド、テキスト、アニメ、ビデオ、お笑いなどが揃うが、同社が最も注目しているのは音楽とアニメだ。

「音楽は対価を払ってそのコンテンツを得るという行動が浸透しているからやりやすい。また業界構造的にも CD 作って売ったら原版権者には15%から入るといったことが確立している。15%取れれば、1枚2,000円とするとミリオンで3億円、もしトリプルミリオンが出れば9億円になる。アニメやキャラクタービジネスも日本では市場が確立している。伊地知がライブドアで手がける『やわらか戦車』は、ネットで吸い上げたものを現金化した見事なモデル」(山崎氏)

また、将来購買してくれるユーザーをネット上で確保している人材と、これからプロモーションする必要があるアーティスト、レーベル側としても受け取りやすいのは前者だろうという考えもある。

作品の権利によってリアルビジネスを展開していくという方針は、ゼロスタートコミュニケーションのこだわりだった。「ネットを目的とするのではなくて、ネットを手段としたい。ネットで完結するのは楽だが、そうすると結局は広告収入依存型になってしまう。広告でしか収益が上がらないビジネスモデルは、稼ぐ場所が見つからなかったことに対する単なる言い訳」と羽田氏は切り捨てる。

SN は SNS に非ず、ソーシャルネットワークの企業活用
ゼロスタートコミュニケーションズのもう一つの事業が posh me! を応用したソーシャルネットワークのシステム外販だ。ただ、いわゆるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)と、同社が販売するソーシャルネットワーク(SN)は別物だという。

山崎氏の説明によれば、SNS が SN 自体を目的としたサービスであるのに対し、SN は様々なサービスの一機能として利用されるものだという。つまり前者の代表が mixi や GREE であり、一方で SN を一つの機能として効果的に活用しているのがアマゾンだという。レビューとレコメンデーションがそれにあたる。レビューの信頼性でさえ他のユーザーによって採点されているのもポイントだ。

ゼロスタートコミュニケーションズが展開していくソーシャルネットワーク「zero-SN」もアマゾンのモデルに近い。要はユーザーが参加してお互いに商品・コンテンツに対するレビューを書き、さらにそれを二次評価し、そしてそれをマーケティングに活かすシステムである。

「SN が機能として使われるのに非常に向いてるのが TSUTAYA さんやエイベックスさんのように多くのユーザーを抱えたコンシューマー向けビジネス。ただそれだけではなくて、ユーザーにリーチするようなサイトならどこでも必ず導入されるはず。」(山崎)

「アマゾンのようなソーシャルネットワークは、クロスセリングのもっとも洗練された形。それと同じことはレンタルビデオの業界でもおそらくできるだろうし、例えばエイベックスさんのレーベルだったら、Posh me! と同じくデビュー支援という手法であったり、あるいは一度契約して一発屋になってしまっているアーティストをもう一度ユーザーが育てられるかどうかを試すこともできる」(羽田氏)

ちなみに現在、日本にある企業でソーシャルネットワークを導入することで、最も付加価値が生まれる企業は楽天だと山崎氏は指摘する。「楽天広場は購買行動と離れているのがよくない。購買行動とものすごく近いところにコミュニティを作って、購買しようとする人を助けてあげることができなかったら意味がない。アマゾンが優れているのは、買おうとするプロセスや買った後に、“この商品を買った人はほかにこんな商品も買っています”と教えてくれる点」。

これまでソーシャルネットワークのシステム外販といえばグループウェア的な活用法が主流だった。レビュー&レコメンデーションという形のソーシャルネットワークならば収益にも結びつくため、企業への導入も容易になるという。

「少なくとも2年、3年後くらいにはあらゆる EC サイトが何らかのソーシャルネットワーク機能を持つようになる」と山崎氏は確信をもって語る。ゼロスタートコミュニケーションズの売り上げ目標は初年度4億円。比率としては B2C と B2B が半々だという。