クルマにつないだ気球に、無線 LAN(Wi-Fi)基地局を取り付け、地上数十メートルの高さに揚げて、広い地域で安定してデータ通信を行えるようにする。こんな設備をソフトバンクモバイルが開発した。「通信サービスの実験場」とも呼ばれる、日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット86」に投入する。

設備の名称は「車載係留気球 Wi-Fi システム」。ソフトバンクはもともと、災害などで通信障害が発生した地域を迅速に復旧させる目的で、2013年に気球を使ったシステムを開発。当初は 3G サービスを中継する機能を備えていた。

コミケに登場する「空飛ぶ Wi-Fi 基地局」--実は災害用システムを改良したもの
原型になった災害用の気球、コミケに登場するのはこれより小型だそう

今回は、3G ではなく Wi-Fi の基地局を搭載。原型に比べ簡素で小型にし、クルマに積み込めるようにした。ソフトバンクに問い合わせたところ、新型の気球についてはまだ写真は非公開。15日から始まるコミケでその姿を確認してほしいとのことだ。

車載係留気球 Wi-Fi システム
車載係留気球 Wi-Fi システム
気球は車載ボックスに収納してイベント会場まで運搬。会場でふくらませ、基地局を取り付けて、上空に揚げる。一連の作業を全て車載ボックス内で済ませられる。

車外に広い作業スペースを必要とせず、風速10メートル以上の強風でも迅速に作業を行える。会場到着後約30分程度でサービスを開始できるという。

ソフトバンクはこれをもう1つの新システムと併用する。大容量の Wi-Fi 通信を実現するために開発した「5.6GHz帯空間分割マルチチャネル Wi-Fi システム」といい、別のクルマに設置する。

1台のクルマは気球を使って空中から広い地域をカバーし、もう1台のクルマは地上から特に通信の混雑する一部の地域をカバーする形になる。

2つの設備はともに8月15日から17日にかけ、東京ビッグサイトに出動する予定。その後もさまざまな大規模イベントに姿を見せる予定だとか。