米国 U.S.- Korea Institute at SAIS の運営する 38 North は、東アジア経済の専門家であるウィーン大学教授 Ruediger Frank 氏による北朝鮮のタブレット端末「Samjiyon」の詳細なレビューを掲載した。

北朝鮮で販売されている Android タブレット「Samjiyon」って、どんなもの?
北朝鮮で販売されているタブレット「Samjiyon」

Frank 氏によれば、Samjiyon からインターネットに接続することはできないという。だが、このデメリットを差し引いたとしても、Samjiyon は北朝鮮の専門家として購入する価値があるものだったと、Frank 氏は述べている。

「数日間集中的に使ってみた結果、このタブレットは、支払った金額以上のものを手に入れられる、消費者としてまれな経験のできる製品の1つだとわかった」

Frank 氏が入手したのは、SA-70 というモデル。これは、2013年3月に製造されたものだそうだ。

Frank 氏が入手した Samjiyon の「SA-70」モデル
Frank 氏が入手した Samjiyon の「SA-70」モデル

SA-70 には、1GHz の CPU、2GB のメモリー、4GB のストレージが搭載されている。7インチディスプレイの解像度は 800x480 ピクセル。現在市場に出回っているタブレットと比較すると、かなり低めの仕様だ。だが、ディスプレイに表示される画像の品質は悪くないという。

前面カメラの解像度は200万画素。背面カメラは付属していない。マイクとジャイロセンサーが付属している。

前面カメラの解像度は200万画素
前面カメラの解像度は200万画素

タブレットにはロッドアンテナが取り付けられており、アナログテレビが視聴できる。北朝鮮で販売されるテレビは、「政治的に正しい」北朝鮮国内の番組しか受信できないといううわさだったが、Frank 氏が試したところ、中国や欧州でも放送局のスキャンが可能だったそうだ。

外部コネクタとしては、HDMI、ヘッドフォン、外部テレビアンテナ、micro USB が搭載されている。ヘッドフォンとしては、Apple の純正ヘッドフォンに非常によく似た形状のものが同梱されているそうだ。

SA-70 のコネクタ類は、側面に配置されている
SA-70 のコネクタ類は、側面に配置されている

Apple iPhone のものとよく似たヘッドフォンも付属
Apple iPhone のものとよく似たヘッドフォンも付属

バッテリー持続可能時間は、オーディオモードで約10時間、コンピューターモードで約5時間。本体のサイズは、196 x 123 x 12 mmで、重さは250g だ。

SA-70 には、OS として Android 4.04「Ice Cream Sandwich」が搭載されている。

アプリとしては、14のゲームがプリインストールされている。Angry Bird、韓国チェスや釣り、バスケットボールなどのゲームが楽しめる。ツールとしては、Microsoft Office(Word、Excel、PowerPoint)、カメラ、時計、音楽プレイヤー、PDF リーダー、ビデオプレイヤー、フォトギャラリーなどが搭載されている。

SA-70 のアプリ画面 壁紙は北朝鮮のロケット「銀河3号」
SA-70 のアプリ画面
壁紙は北朝鮮のロケット「銀河3号」

Frank 氏は、これらのアプリは「石器時代から存在しており、MS Office 以外は珍しいものではない」と述べる。だが、電子書籍アプリには圧倒されたそうだ。

SA-70 に搭載された電子書籍
SA-70 に搭載された電子書籍

SA-70 には、電子書籍として韓国語の百科事典が含まれている。これは、30巻からなるもので、データ量は2.4GB にものぼるものだそうだ。

また、学校の教科書も電子書籍として同梱されており、北朝鮮の学校教育を垣間見ることができる。同梱された教科書は、1年生から10年生までのもの。その冊数は141冊で、ファイルサイズは合計で3.27GB に達しているという。

SA-70 には、北朝鮮の学校教科書も同梱されている
SA-70 には、北朝鮮の学校教科書も同梱されている

数学の教科書の一部
数学の教科書の一部

こちらは理科の教科書の一部
こちらは理科の教科書の一部

SA-70 にはこれらの他にも、数百冊もの電子書籍が同梱されているという。

Frank 氏によれば、SA-70 の価格は257ドル(約2万5,500円)。膨大な数の電子書籍がプリインストールされていることを考えれば、この価格は安いと Frank 氏は述べている。

「プリインストールされたアプリの数と品質は、驚くベきものだ。そしてこの製品が置かれた市場の特異性を反映している」

一方で Frank 氏は次のようにも述べている。

「このタブレットは、北朝鮮の多くの人々が、厳しい単純労働と、質素な生活を強いられる国であるという事実を変えるものではない。≪中略≫ 北朝鮮の人のほとんどは、食料と暖房のことを心配しており、電子ガジェットのことを気にする余裕はない。だが、北朝鮮に200万台を超えるモバイルフォンが存在しているのと同様、Samjiyon タブレットも存在しており、これは、北朝鮮が多様な側面を持った社会であることを映し出している」