9月10日のイベントで、米国 Apple が2つの新たなスマートフォン「iPhone 5S」と「iPhone 5C」を発表するのは確実だと見られている。

iPhone 5C の「C」は、China の「C」― ブルーがあってパープルがない理由とは?
Apple が9月10日に米国で開催するイベントの招待状

だが Apple にとっての本当のイベントは、その翌日に控えている。Apple は9月11日、北京の中国ワールドトレードセンターで、イベントを開催するのだ。

Apple が中国メディア宛てに送付した招待状
Apple が中国メディア宛てに送付したイベントの招待状
米国向け招待状にそっくり

Apple が中国でこのようなイベントを開催するのは初めてのことだ。なぜ今、このような大規模なイベントを中国で実施する必要があるのだろうか?

その理由は簡単だ。

スマートフォンメーカーにとって、中国での成功が、そのメーカーの成功に直結するようになったためだ。スマートフォン売上の3分の1は、いまや中国市場から来ている。その市場規模は、800億ドルに達しているのだ。

比較してみよう。米国人は2013年の第2四半期に3,300万台のスマートフォンを購入した。だが、中国の消費者は同期に8,800万台のスマートフォンを購入している。中国市場は Apple にとって、米国市場の2倍以上の重要性を持っているのだ。

現在の Apple は、中国市場への進出に成功しているとは言えない状況にある。Apple の中国スマートフォン市場におけるシェアは、わずか5%に留まっている(ライバルである Samsung のシェアは19%に達している)。

中国で成功を収めるため、Apple は新型 iPhone で3つの新たなマーケティング戦略を打ち出すと、私は予測する。その戦略のうちの2つは、世界中の iPhone ユーザーに影響を与えるものだ。

私の予測する Apple の新中国戦略とは、次の3つだ。

1. カラ―バリエーションの追加

Apple は新型 iPhone でそのカラ―戦略を大きく変更すると見られている。このカラ―戦略の変更は、中国での成功を目指したものだ。

ハイエンドの iPhone 5S には、カラ―バリエーションとしてゴールドが追加されるとうわさされている。そして廉価版の iPhone 5C では、カラ―バリエーションとして、ピンク、ブルー、グリーン、イエロー、ホワイトが用意されると言われている。

イメージ
ゴールド版 iPhone 5S モックアップ(出典:iMore)

カラ―の持つ意味合いは、文化によって異なる。

例えば、米国では「ブラック」は優雅さやパワー、「ホワイト」は純粋さを意味している。これまでの iPhone のカラ―がブラックとホワイトだった理由はここにあると言っても過言ではないだろう。

だが、iPhone のカラ―がブラックとホワイトのみだったことは、Apple の中国市場での成功を阻んできた要因の1つでもあったのだ。

Cheskin、MSI-ITM 、CMCD による共同のマーケティング調査「Global Market  Bias : Part 1 Color」は、国によって、あるいは文化によって、カラ―の意味が大きく異なっていることを明らかにしている。商品のカラ―選択を誤ると、商品自体が優れたものであっても、特定の国でまったく売れないということが起こりうるのだ。

この調査を見れば、Apple のこれまでのカラ―戦略が、中国市場での成功を求める上で問題があったことは明らかだ。同レポートには次のようにある。

「一般に、ホワイトは新鮮さや清潔感、それに高級感と関連付けられている。だが中国では他の地域とは異なり、韓国と同様、ホワイトを寂しい色だと考えている」

中国ではホワイトはまた、死や葬式と結びつけられて考えられがちであり、ブラックは苦難や不幸と結びられつけがちなのだそうだ。

Apple のこれまでのカラ―戦略は、中国の消費者に、寂しさや苦難、それに不幸を感じさせるものだった。これでは成功するわけがない。

調査は中国人が好むカラ―も明らかにしている。それはブルーだ。ブルーはほとんどの国で好ましいカラ―となっているが、中国では調査対象者の37%がブルーをお気に入りのカラ―だと回答している。

調査ではまた、中国ではブルーがパワーを示すカラ―であることも明らかとなった。これは英語圏の国々や日本とは対照的な結果だ。これらの国々では、ブルーがパワーと関連付けられることはなく、むしろ寂しさと関連付けられることが多い。

中国では「ブルー」は「パワー」と関連付けられている
中国では「ブルー」は「パワー」と関連付けられている


パープルは世界のほとんどの国で高い地位や名声を意味している。だが、中国だけは例外だ。例えば、英語圏の国々と日本、それに韓国では、パープルは名声を意味している。だが、中国でパープルを高い地位や名声と関連付けた消費者はわずかに12%しか存在しなかった。

中国では「パープル」は「高い地位」や「名声」と関連付けられていない
中国では「パープル」は「高い地位」や「名声」と関連付けられていない

これが iPhone 5C のカラ―バリエーションにブルーがあり、パープルがない理由だ。

調査にはゴールドは含まれていない。これはこの調査のとても残念なところだ。なぜなら、中国市場に対する iPhone の売り込みを考えたとき、ゴールドはとても重要なカラ―となるからだ。私はゴールドが、中国で最もよく売れるカラ―オプションになると予測している。

中国では、ゴールドは、健康、幸運、幸せを意味している。これが iPhone 5S のカラ―バリエーションにゴールドが追加された理由だ。

欧米市場だけを見たとき、Apple がゴールドをカラ―バリエーションに含めることは考えにくい。だがゴールドは、中国では大きな意味があるし、インドでも成功する可能性が高いカラ―なのだ。

2. ステータスシンボル vs. 低価格

スマートフォンを購入する場合、それが「ステータスシンボル」となるかどうか?を選択のカギとする人は、世界のどこにでも存在している。だがこの傾向は、中国では特に顕著だ。

中国の一部消費者は、通常では考えられないほど高価な(あるいは、高価に見える)スマートフォンを欲している。

例えば、Samsung は2,000ドルの携帯電話を中国市場限定で販売しているが、これなどはその良い例だ。これは、所有者が経済的に豊かであることを周囲にアピールするための商品だ。

Samsung が中国限定で販売している2,000ドルの携帯電話
Samsung が中国限定で販売している2,000ドルの携帯電話

一方、低価格もスマートフォン選択での重要なカギとなっている。だがこの傾向も、中国では顕著なのだ。中国では、驚くほど安価なスマートフォンを欲する人が多い。

中国人消費者が安価なスマートフォンを求めるとき、その安さは尋常なものではない。事実、中国では100ドル以下のスマートフォンが、携帯電話市場シェアのかなりの部分を占めているのだ。

Apple が2,000ドル以上あるいは100ドル以下のスマートフォンを製造するのは無理だろう。だが、iPhone 5S と iPhone 5C という2つのラインを作り、iPhone 5S を「ステータス」を求める人に、iPhone 5C を「低価格」を求める人に販売するという戦略は、中国市場における成功には大きな意味を持つことになる。

3. 中国移動通信

私は、Apple は9月11日のイベントで、中国移動通信との提携を発表すると予測する。Apple はこれまで何年もそれを望んできたが、うまくいっていなかった。中国移動通信は、7億4,000万の利用者を持つ、世界最大のキャリアだ。そして、Apple の iPhone を扱っていない、中国唯一のキャリアでもある。

Apple はゴールド戦略で、中国で成功を収める

私は今回のコラムで多くの予測をした。だが、最大の予測はこれだ。

「Apple はゴールド戦略により、大きな成功を収める」

批評家達は、Android スマートフォンが画期的なイノベーションを実現しているのに、iPhone の変更が表面的なものに留まっているとして Apple を批判している。だが Apple は今回の戦略で、過去の iPhone の売上台数記録を塗り替え、大きな成功を収めて彼らを驚かせることになるだろう。

Apple が成功すると考える理由はとてもシンプルだ。Apple はそのフラグシップ製品のライン全体を、中国の消費者にアピールするよう、再構築したからだ。

そしてスマートフォンメーカーにとって、中国での成功は、そのままそのメーカーの成功に直結しているのだ。

Mike Elgan
Mike Elgan は、Elgan Media の CEO。internet.com の他、Computerworld、Cult of Mac などの IT 関連メディアに寄稿している。