「ソフトバンク は Sprint Nextel(Sprint)の株主に対し、より優れた価値を提供できる。私はこれに自信を持っている」

ソフトバンクの CEOである孫正義氏は、4月30日に実施された説明会でこのように述べた。

ソフトバンクと Sprint は2012年10月15日、Sprint 株式の70%を201億ドルで購入することで合意した。この取引は完了に近づきつつあったが、今月初旬、米衛星放送サービス会社の Dish Network(Dish)が Sprint の255億ドルでの買収に名乗りをあげ、Dish-Sprint の組み合わせの方が多くの点で米国モバイル市場にプラスの影響を与えられると主張した。Dish は、モバイル市場では動画のストリーミングが最も重要な要素となっているが、Dish と Sprint が合併すれば、家の中では衛星で、家の外ではモバイルで、それぞれ最高の動画体験を提供できるとしている。Dish 会長の Charles Ergen 氏は、4月15日の電話会議でアナリストに対して次のように説明した。

「全米規模でこれを提供可能な企業は、現時点では1社も存在しない。だが、Dish-Sprint であれば可能だ」

だが、ソフトバンクの孫氏は Dish の提案を「不完全だし、まやかしがある」と指摘した。

Dish は電話会議で、ソフトバンクが提案する1株当たりの価値が6.22ドルであるのに対し、Dish は7ドルだと述べた。だが孫氏は、シナジーを考慮した価値では、ソフトバンクが7.65ドルで、Dish は6.31ドルだと主張する。

「Dish は、自分たちの数字と我々の数字を正しい条件下で比較していない。≪中略≫ 私は、ソフトバンクからの提案は、Dish を21%上回っていると見ている」

ソフトバンク CEO:Dish の提示は ソフトバンクより劣っているし、不完全だし、まやかしがある
Dish の主張する1株あたりの価値

ソフトバンクの主張する1株あたりの価値
ソフトバンクの主張する1株あたりの価値

孫氏は、この数値の根拠を説明した。孫氏はまず、Dish は少なくとも2014年の半ばまでは、Sprint への支払いができない点を指摘。これに対しソフトバンクは、2013年7月での支払いが可能だと述べた。また、ソフトバンクは取引に必要な資金をすでに調達しているが、Dish では複雑な資金繰りをしなければならない点も指摘している。

「ソフトバンクは、利益においても、売上高においても、世界最速のペースで成長を続けている。様々な点において、世界最速だと言える」

また、孫氏は次のように付け加えた。

「Dish には、モバイル業界での専門知識がまったくない」

孫氏は一部の人が、ソフトバンクが提供できるのは資金のみであり、シナジーが存在しないと指摘していることにも触れた。これに対し孫氏は、ソフトバンクは Sprint に対して、世界規模のスケールメリットを与えられると反論している。

「モバイル産業では、スケールの大きさが重要な意味を持っている。スケールがすべてと言っても良い。Sprint は業務効率化のために、スケールメリットを必要としている。≪中略≫ Dish は Sprint の状況について、詳細なところは全く理解していない。だが我々は、すでに Sprint と8か月に及ぶ交渉を続けている。ここ数か月は、毎週のようにやりとりをしており、どこにシナジーがあるかについても、よく理解している」

ソフトバンクと Sprint との間における交渉の模様(出典:ソフトバンク)
ソフトバンクと Sprint との間における交渉の模様(出典:ソフトバンク)

Dish からの買収提案を受け、アナリストの多くはソフトバンクがカウンターオファーを出す可能性が高いと予測していた。例えば Canaccord Genuity のアナリスト Greg Miller 氏は4月16日、カウンターオファーは「大いにありうる」と述べていた。

だが孫氏はソフトバンクによる Sprint 株主に対する提示は、短期的にも長期的にも Dish よりも高い価値を提供できるとし「すでに合意済みの条件による2013年7月の取引完了」を望んでいると述べた。

孫氏は、ソフトバンクの提案は Dish よりも優れたものであり、上積みをする必要はないと強調した。

孫氏は次のように語り、会見を締めくくった。

「ソフトバンクに成功の機会を与えて欲しい。これは米国顧客にとっても、Sprint の株主にとっても、新たなアメリカンドリームとなりうるものだ」