Mobile

モバイル

モバイル市場を捉える

西田 徹
2006年10月6日 / 09:00
 
 
「モバイル市場の状況を把握していますか?」

このコラムの読者なら、上記の質問に対して「YES」と答える方が多いだろう。携帯電話の普及台数。そのうち第三世代携帯が占める割合。消費者が1日当たりにやりとりするモバイルメールの通数。モバイル通販の推定市場規模、などなど。でも、モバイル市場を把握するにはこれだけで十分なのだろうか。

● 2次データ→1次データ→定性データ→直観

モバイルに限らず、市場を把握する切り口は合計4つある。順に解説しよう。

【1】 信頼できる2次データ
コラムの冒頭に例示したデータは2次データと呼ばれるものたちである。調査会社や公共機関が実施した調査結果を各企業が2次的に利用するためにそう呼ばれる。多くの場合は数百〜数千といった十分なサンプル数をもとに実施されており、統計の専門家がその有意性をしっかり検証している。一言でいうと「信頼できる調査結果」なのである。

ただし、2次データにもいくつかの問題がある。2次データは最大公約数的な調査ニーズに基づいている。つまり自社の状況にぴったり合う調査がなされていることは希なのだ。

例えば「寿司の握り方をモバイル動画で配信したら、消費者は幾らぐらいのお金を払ってくれるだろうか」という疑問があったとする。モバイル動画課金に関する調査を見つけること自体が難しいかもしれない。百歩譲ってそれを発見したとしても、「寿司の握り方」という特殊なテーマでの調査がなされている可能性は、限りなくゼロに近いだろう。

もうひとつの問題は、競合も同じデータを見ているということだ。斬新なモバイルマーケティング施策を構築しようとするのであれば、その基盤となる情報が競合にも公開されているというのは、ハンディとなり得るのである。

【2】 自社だけの1次データ
2次データの欠点を克服するためには、自社だけのオリジナル調査が必要になる。以前は数百万円といったオーダーの費用が必要であったが、インターネット調査を利用すれば1桁少ない予算で実施が可能だ。

上述した「寿司の握り方をモバイル動画で配信したら、消費者は幾らぐらいのお金を払ってくれるだろうか」といった特殊なテーマに関しても、一定のサンプル数から得られた数値データで検証することが可能なのである。ただし、1次データに比較すると時間と予算がかかることは覚悟しておく必要がある。

【3】 生き生きとした定性データ
自社のためだけに構築した1次データを見ても「なんだかピンと来ない」という場合がある。市場の状況は極めて多様なニュアンスを含んでいるのだが、それを一定の切り口で切り取って数値化したのが1次データである。裏を返すと豊かなニュアンスのようなものは失われてしまっているのである。

定性的データはそこに強みを発揮する。グループインタビューという手法がその典型例である。例えば、5名のモバイルユーザーを呼んで、動画閲覧というテーマで自由に四方山話をしてもらう。司会者は質問を投げかけたり、時には重箱の隅に入ってしまった状況を修正したりする。

上記の例でいえば、サンプル数はたった5個しかない。しかし、数値データを眺めていても決して見えてこない豊かなニュアンスを、「フリーコメント」という形で切り取ることが可能なのである。

【4】 潜在ニーズを読み取る直観
今まで紹介してきた3つの手法は、すべて市場の「顕在ニーズ」を取得する方法である。ところが、それだけでは市場の把握は十分ではない。消費者が自分でも気づいていないニーズ、すなわち「潜在ニーズ」をくみ取ることが、斬新なマーケティング施策を構築する際には必要となるのだ。

「潜在ニーズ」の重要性はマーケターの間でよく認知されていて、「どうやって潜在ニーズをくみ取るのですか?」と聞かれることが多い。これが難問なのである。定義により、「潜在ニーズ」とは消費者が自分でも気づいていないニーズである。よって、すべての調査手法は無効なのだ。

頼れるのは自分の直観しかない。例えば行きつけの寿司屋で若い女性が「ねえ、大将。お寿司ってどうやって握るの?」と尋ねているシーンを見たとしよう。「なるほど、若い女性も気楽に寿司屋に入る時代になったのか。寿司の握り方って分解写真で見てもわからないよな。そうか、携帯動画で配信したらコンテンツとして成り立つかもしれないぞ」。こんな具合である。

● 自分で意志決定する場面、他人を説得する場面
4種類の市場把握手法を紹介してきたが、それに対する印象は人によって様々だろう。信頼性を重んじる傾向のある人は、「【1】から【4】になるに従って、だんだんといい加減なやり方になってきているな」という印象を持つだろう。一方、オリジナリティを重んじる傾向のある人は「【1】から【4】になるに従って、どんどん本質に迫ってきているな」と思うかもしれない。

実はこれら4つの手法自体には優劣はない。特徴の違いがあるだけなのだ。言い方を変えると、意志決定プロセスの場面が違えば、それに適した市場把握の手法が変わってくるのである。

場面を大きくふたつに分けてみよう。「自分で意志決定する場面」と「他人を説得する場面」である。

自分で意志決定する場面に有効なのは、直観や定性データである。幅は狭いかもしれないが、深い(豊かな)情報の中から、「これで行けそうだ!」というマーケティング施策を思いつくのである。

ただし、これらの情報を他人を説得する段階で使ってはいけない。

自分:「寿司の握り方をモバイル動画で配信しようと思います」
社長:「ほほう。面白いが、ニーズは大きいのかね?」
自分:「わかりません。自分の直観です」

これではお話にならない。自分の中で意見が固まったら、次に他人を説得するための情報を得る必要がある。それが1次情報や2次情報といった定量データである。

定量データも間違った場面で使うと意味がない。斬新なモバイルマーケティング施策を構築せよという社命をうけて、○○白書といった2次データを山のように積み上げ、うんうん唸っている人がいたとしよう。恐らくこの人からは陳腐な提案しか出てこないのではないだろうか。

市場を把握することは極めて重要だ。いくつかの手法の特性を見極め、適切な場面で適切な手法を使っているか。もう一度自社の状況を点検してみてはいかがだろうか。
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