自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始

カナダElectrom LEVが、「Electrom」の生産をついに(やっと?)開始しました。電動バイクと電動アシスト自転車の境界をなくす、新しい電動ビークルです。

自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
「Electrom」生産開始!

「Electrom」の特徴は、自転車版のe-POWERともいえる「ジェネレーター・チェーン・ドライブ(Generator Chain Drive:GCD)」を搭載している点にあります。この「GCD」は走行速度が15km/h以下のときには、搭乗者がペダルを漕ぐ力をチェーンで後輪に伝達して「Electrom」を電動アシスト自転車として走行させます。速度が15km/hを超えたところでモーターのみでの走行を開始。以降は、ペダルパワーはすべて発電機に伝達されて、バッテリーを充電する目的でのみ使用されるようになります。


自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
ギアは非常に軽い設定
走り出しは軽快だそうです

「GCD」は、“ガソリンエンジンは発電に使われ、モーターが駆動に使用される”日産のe-POWERによく似たシステム。でもe-POWERとは異なり、ガソリンエンジンではなく人間のペダルパワーが発電に使われています。また、「Electrom」では15km/h以下ではペダルパワーが走行にも使用されるので、さらに複雑なハイブリッドシステムと言えるかもしれません。

自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
漕いで発電!

ハイブリッドシステムは複雑ですが、運転はとても簡単。操作に使用するのはスロットル、ブレーキ、ウインカーレバーのみで変速レバーさえ装備されていません。「Electrom」のベースとなっているのはリカンベントタイプの自転車なので、自転車に乗れるのであれば「Electrom」もすぐに運転できるようになります。

自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
“リカンベントは路上で被視認性が低い”
を解決するライトシステムを搭載

「GCD」に似たシステムとしてはシェフラーによる「フリードライブ」もあげられます。こちらは搭乗者がペダルを漕げば漕ぐほど、自転車の速度があがるという仕組み。対して「GCD」では速度はスロットルで調整するので、搭乗者は自分の好きなペースでペダルを漕げます。これはエクササイズをしている人には好都合な仕様となっています。

自転車版のe-POWER?ただし発電するのは人間! 「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
ゆっくり走っているときでも
全力でペダルを漕げます

「Electrom」に搭載されたリチウムイオンバッテリーは、充電器を使用したチャージも可能で、フル充電すれば最大200km走行できます。別売りのセカンドバッテリーを追加すれば航続距離を最大400kmにまで伸ばせます。

モーターはフロントとリアの“デュアルモーター”システム。メインで使用されるのはリアハブモーターでハイパワーな上に回生ブレーキシステムを備えています。フロントに装備されたのは出力の小さなハブモーター。こちらは登坂などでパワーが欲しいときなどにその力を発揮してくれます。最高速度は65km/hとなっています。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
ハイパワーなリアハブモーター

2017年のプロトタイプから2021年の量産モデルまでの間に、使い勝手が向上しました。地面からフットパネルまでの高さは約43cmに調整され、誰でも簡単に乗り降りできるようになりました。フェアリングは跳ね上げ式で、これも乗降のしやすさをアシストします。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
雨や風から搭乗者を守る跳ね上げ式フェアリング

安定性の高いセンタースタンドも装備。これは乗り降りや荷物の積み下ろしを楽にしてくれるだけでなく、信号待ちでとても便利だそう。スタンドはペダルを踏み込み踏み「Electrom」が走行を開始すれば跳ね上がるので、青信号で出遅れることはないそうです。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
停止時に足を付けなくて良いので楽!

リアにはトランクが装備されているので、週末のまとめ買いにも対応できます。2017年にプロトタイプが公開されたときにはトランク容量は100Lでしたが、量産モデルでは120Lとより多くの食材を運べるようになりました。カーゴエリアには人を乗せることもできます。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
子どもの送り迎えにも使えそうですね

さて、「Electrom」が開発されたメインの目的はもちろんCO2排出量と化石燃料使用量の削減。でもその他に、渋滞の解消という目的も持っています。「Electrom」の幅は約66cmなのでクルマとクルマの間をすり抜けて走れるのだとか。また「Electrom」が道路の主役になれば、すり抜ける必要さえなくなります。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始
カナダでは自転車扱いになるのでかなり自由に走れます

Electrom LEVは「Electrom」の第一世代の出荷を2022年の春に開始する予定。輸送コストを抑えるために完成車ではなくキット形式で販売し、価格は1万2,500ドルから。この第一世代の売り上げによって今後の価格や生産規模などを決定するとしています。

「Electrom」ついに(やっと)製造を開始

日本への出荷については過去2回、Electrom LEVのFabrizio CrossさんとEメールやチャットで話し合ったことがあります。その際の結論は、「日本の交通法規が北米や欧州と違いすぎ、日本仕様車を作るには費用が掛かりすぎるために、日本進出は難しい」というものに。でも第一世代が北米市場でよく売れれば、日本の法規に対応したモデルを開発する可能性がでてくるかもしれません。北米での売れ行きに期待しましょう。