QNNのイメージ画像

内閣府の主導のもとで開発されたという日本発の「量子コンピューター」をめぐり、インターネット上で疑問が次々に沸き上がっている。その仕組みからして量子コンピューターと呼んでよいのかどうか、判断に困っている人が多い。

量子コンピューターは、量子力学の原理を用い、従来のコンピューターでは難しい性能、機能を発揮する機器として期待が集まっている。以前は「量子ゲート方式」と呼ぶ仕組みの研究が主流として注目を浴びてきたが、最近は別の「量子アニーリング(焼きなまし)方式」で実用化したという製品も海外で登場してきている。


大学のような研究機関だけでなくGoogle、IBM、IntelといったITの巨人も開発競争に加わり、また各国政府も動いている。米国などの存在感が強い分野だが、新たに日本発で登場したのが「量子ニューラルネットワーク(QNN)」というもの。

開発したのは内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本喜久プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環としてだ。

参加しているのはNTT物性科学基礎研究所量子光制御研究グループの武居弘樹上席特別研究員、本庄利守主任研究員らのグループ、情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系の河原林健一教授、加古敏特任准教授らのグループ、東京大学生産技術研究所の合原一幸教授、神山恭平特任助教らのグループ。

QNNは11月27日よりクラウド上に公開し、Webサイトを通じて一般の人でも試せるようにするという。

さて、ひとたび正式発表があるや、テレビや新聞、ITを専門にするニュースサイトまで、マスメディアはこぞってQNNをもてはやしたが、他方でTwitterなどのソーシャルメディアでは技術好き(ギーク)が混乱を来した。

光パラメトリック発振器と呼ぶ新型レーザーの特性を生かし、さまざまな最適化問題の解を従来に比べて飛躍的に高速に得る、というQNNがいったい量子アニーリングや量子ゲートといった方式のどれに合致するのか、にわかに分からなかったためだ。

量子コンピューター開発は、バイオ分野における幹細胞研究と同じように最先端の手法がしのぎを削っているだけに、外野が軽々に判断を下せない。疑念や不可解さを感じても、すぐにはっきりした答えが出るとは限らない状況だ。

このごろ人気を集める量子アニーリング方式を採用したカナダD-Wave Systemsの製品も、はじめ量子コンピューターと呼ぶのが適切かどうか、専門家のあいだで意見が割れた。ただ検証を重ねるうち次第に一定の地位を獲得していった。

QNNも同様の過程を経るのか、27日から始まる一般公開が多くのギークの問いに応えるものになることを期待したい。