ヒアリのイメージ

危険な外来種のアリ「ヒアリ」が、関東の内陸部でも見つかった。環境省が発表した。

ヒアリは毒針を持ち、刺された人間がアナフィキラシーショックに陥る恐れがあり、海外では死者が出ている。南米原産だが国際貿易によって米国、中国などに広がり、各地で繁殖している。


8月10日に埼玉県狭山市の事業者敷地内に運び込んだ積荷の梱包材から、ヒアリとおぼしき死骸が1つ見つかった。専門家が調べたところ16日になってヒアリの女王と判明した。

ヒアリの女王写真
狭山市で見つかったヒアリの女王(出典:環境省)

ヒアリが見つかった積荷のコンテナは中国・黄埔港から貨物船で搬送し、7月11日に東京港青海ふ頭で陸揚げし、同じ月の18日または19日に狭山の敷地に到着した。

積荷とコンテナは、トレーラーに載せ、フォークリフトで倉庫に直接搬入し、野外に置いていなかったそう。また該当する敷地を管理する事業者は、予防のため殺虫餌(ベイト剤)を設置していた。さらに埼玉県と狭山市がアリ発見後に周辺を調べたが、ヒアリらしきアリは見つけていない。

環境省では、この地域周辺にヒアリが定着、繁殖した可能性は低いと考えている。

一方で今後、同様のルートで製品を輸入する際、ヒアリなどが付着、混入しないよう倉庫、コンテナ置き場、積み出し港などの状況を把握し、対策を講じるようあらためて関係者に求めている。

今回、ヒアリの女王が関東内陸にあらわれたこともさることながら、発見時点で死骸になっていたこと、狭山の事業者があらかじめ殺虫餌を設置していたことが注目される。

環境省は国土交通省と一緒にヒアリが広がっている国と定期便の行き来がある68の港湾で殺虫餌を設置するなど、水際の対策をとってきたが、加えて内陸の事業者も同様の取り組みを始めている。

このように次々と殺虫餌の設置が進むと、もともとその土地にいる在来種のアリが巻き添えとなるとの指摘が以前からある。在来種はそこに住みついていることでヒアリのような外来種の定着を抑制している場合もあるため、やりすぎは逆効果ではないかとの懸念も出ている。

しかし殺虫餌がヒアリに有効であることもまた、複数のメーカーの実験によって検証済みだ。今後もバランスをとりながら侵入を防いでいく工夫が必要になる。