カワウソのイメージ
琉球大の自動撮影装置がとらえたカワウソ

長崎県の対馬市で、国内としては38年ぶりに野生のカワウソがあらわれた、と話題になっている。その姿をカメラにとらえた琉球大学はクリエイティブコモンズ(CC)として映像を公開した。

今回のカワウソ発見は偶然の結果。琉球大学の動物生態学研究室が、絶滅の恐れがある「ツシマヤマネコ」の生態調査のために設置した自動撮影装置が2月、すでに日本で絶滅してしまったはずのカワウソを映像に収めた。


ツシマヤマネコのイメージ
ツシマヤマネコ(出典:環境省)

かつて日本にいたカワウソは「ニホンカワウソ」という名前で、明治時代までは全国に分布していたが、毛皮や薬の材料のための狩猟に加え、暮らせる場所の破壊が進み、四国を除く地域では1955~1960年頃にはいなくなり、1979年の高知県での目撃を最後に生息を確認できず、環境省は2012年に絶滅種に指定した。

なお対馬には江戸時代まで生息していた記録が見つかっている。

今回あらわれたのは、絶滅したはずのニホンカワウソだろうか。琉球大は動画だけでは分からないと断っている。環境省が7月からカワウソの糞や巣を探す調査を始めていて、新鮮な糞が見つかれば、DNAを用いて種名やどこから来たのかなど詳しいことが分かる可能性がある。ごく近い種であるユーラシアカワウソとの推測もある。

なお、どこから来たのかについては、次の3つの可能性が挙がっている。

(1) 対馬で細々と生き残っていた
(2) 韓国から泳いで渡ってきた
(3) なんらかの人間の活動によって海外から移動してきた

(1)であればニホンカワウソは絶滅していなかったという希望が出てくる。(2)であれば朝鮮半島に今も生息しているユーラシアカワウソの可能性が高まる。(3)であれば、誰かがペットなどとして持ち込んだり、船などに紛れてやってきたりしたということになる。

最近インターネット上で熱烈な人気を誇るアニメ「けものフレンズ」に「コツメカワウソ」などが登場したこともあり、今回のニュースもTwitterでは注目度が高く、琉球大がCCとしてWebサイトに公開した動画も多くの関心を集めている。

ちなみに、けものフレンズは以前、視聴したファンがこぞって動物園に出かける社会現象を引き起こしたが、対馬のカワウソは野生環境で見つかっただけに一般の人が出会うのは難しい。

琉球大は注意点として、カワウソに餌付けをしないことや、カワウソの糞を見つけても持ち帰らないことを広く呼びかけている。

餌を置くと、ツシマヤマネコなどの野生動物のほか、イエネコや野良犬など他の動物も引き寄せてしまう。そうして多くの動物が集まる場所を作ると、争いになったり病気の感染を引き起こす恐れがある。また糞については先述の環境省による生息状況調査に混乱を来す恐れがある。