ヒアリのイラスト
いらすとやにも描かれた「ヒアリ」、ネットではヘンなウワサが流行

「ヒアリに刺されても死なない」。そんなウワサが広まっている。環境省の資料がヒアリによる死者数を訂正したことで、インターネット上でまた話がふくらんでしまったようだ。

5月に日本で見つかった危険な外来種ヒアリをめぐっては、なじみがないためか極端な楽観論と悲観論をいったりきたりする状況が続いている。


7月前半には悲観論が登場。一部のまとめサイトで「ヒアリに弱点はない」「在来種のアリでは歯が立たない」といったウワサがひとりあるきしたが、フマキラーやアース製薬は通常のアリ用殺虫剤が利くと説明。検証動画も公開した。さらに米国の州立テキサス農工大などで以前から在来種のアリがヒアリの活動を抑制する研究があることが明らかになっている。

7月後半になると今度は楽観論が台頭。まとめサイトから「朗報、ヒアリに刺されたら死亡、はガセだったことが判明!」といった怪情報があふれた。

背景には環境省がヒアリ対策のパンフレットを一部訂正したことがある。専門書から引用した「北米で年間100人が死亡」という記述は不正確な恐れがあるとして削除したのだ。

ただし「死者の数」に疑いがあるとしても「死者が出ていること」を否定したのではない点は注意だ。

あくまで慎重を期すための措置なのだが、話をおおげさにするむきは「ヒアリに刺されても痛いだけ」といった声を盛んに紹介した。

一方、国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)の公開している「ヒアリに関するFAQ」では、「ヒアリ刺症による死者は過去に確実に存在する」として海外文献を取り上げている。

1989年に発表になった初の全米規模の調査結果では、少なくとも30人の死者を確認している。生後16か月の赤ん坊がヒアリの巣に倒れ、刺されて呼吸困難になり、看護師の親が救命を試みたが、脳死になった事例などがあるという。

日本では定着は明らかになっていないが、米国など複数か国に広がっているヒアリ。夏に海外へ出かける人は「刺されても死なない」といった怪しげな情報はうのみにせず、現地の適切な安全対策に従って身を守った方がよいだろう。