ボイジャー探査機が打ち上げられたのは、いまから39年前の1977年。そのボイジャーには、地球の自然や文化を伝える音声や音楽、そして画像など、地球外知的生命体へのメッセージが収められた「ゴールデンレコード」が搭載されていた。


その「ゴールデンレコード」を復刻させ、市販するプロジェクトが「Voyager Golden Record: 40th Anniversary Edition」。ボイジャー打ち上げ40周年を記念し、2017年8月出荷を目指して進められている。



ボイジャーに搭載された「ゴールデンレコード」には、地球上での様々な音が収録されている。鳥の鳴き声や電車の音、そして子供の鳴き声などだ。音声としては、55の言語でのあいさつも収録されている。日本語の「こんにちは、お元気ですか？」というあいさつも、もちろん収録されている。

音楽としてはバッハやモーツアルト、ベートーベンなどの楽曲が収録された。日本人尺八奏者山口五郎氏が演奏した鶴の巣籠」も収録されている。

今回のプロジェクトでは、これらの音源をリマスターし、LPサイズのレコードに収録する。オリジナル版「ゴールデンレコード」制作時のプロデューサーだったTimothy Ferris氏もレコーディングスタジオに入り、最高品質の音源からリマスターが行われるという。

ボイジャーに搭載された「ゴールデンレコード」の素材は、銅を金メッキしたもの。レコードカバーはアルミ製で、その表面はウラン238で覆われていた。復刻版ではさすがにこれら素材まで復刻されるわけではない。レコードはヴァイナルで、カバーは紙ジャケット仕様。某アーチストの全作品集のヴァイナル版に、ちょっとだけ似た仕様だ。


ヴァイナルレコードを入手したとして、いまとなっては再生するレコードプレイヤーがないという人も多いだろう。また、プレイヤーがあったとしても、この復刻版ゴールドレコードに針を落とす勇気がないという人もいるはずだ。レコードは消耗品で、針を落とす度に音が劣化していく。このような記念の商品は、できれば出荷当時の状態を保って取っておきたいものだ。

そのような人向けに、商品にはデジタルダウンロードカードが同梱される。カードに書かれたアクセスコードを入力すれば、インターネットからMP3またはFLAC形式の音楽ファイルをダウンロードできるそうだ。

製品パッケージにはヴァイナルレコード3枚のほか、ボイジャー計画の歴史や、探査機が送信してきた画像などを収めた豪華なカラーブックも付属する。



このプロジェクトは、クラウドファンディングサイトkickstarter上で実施されているもの。「ゴールデンレコード」を入手するには、98ドルの出資が必要だ。本稿掲載時点では、出資受付時間終了まではあと19時間。入手したいという方は、急がれた方がよいだろう。出荷は前述の通り、2017年8月に予定されている。

ちなみに、筆者は音声ファイルをダウンロードする権利のみを購入した。これなら、15ドルの出資で入手可能だ。

さて、地球ではレコードは1940年に登場し、1980年代にCDが広く普及するまで、長きにわたって音楽再生メディアの主役であり続けた。その他のメディアと比べると、その寿命はかなり長い。NASAが地球の音声の記録にこのレコードというメディアを選んだのは、1977年がまさにレコードの全盛時代だったことも、理由の1つだろう。

だが、もし今同じようなプロジェクトを実施するなら、NASAはレコードというメディアを選ぶだろうか？

また、ボイジャーが打ち上げられたころ、このメッセージを宇宙人は解析できるのか？という議論が起きた。こちらも21世紀の今、もう一度検証してみてもよいかもしれない。宇宙人ではなく、地球の中学生、高校生あたりであっても、レコードを見たことがないという人が多くなっているからだ。


「ゴールデンレコード」を聞きながら、そんなあれこれに思いを馳せるのも、楽しいかもしれない。