studioTEDによるホログラフィックの例
studioTEDによるホログラフィックの例

空中に映像を浮かべる「ホログラフィック」がじわじわと注目を集めている。歴史ある技術だが、なぜ最近人気なのか。この分野で勢いのあるstudioTEDに話を聞いた。

ホログラフィックという言葉には色々な意味があるが、ここでは光の性質を利用し、何もない空間に3D映像などを浮かび上がらせる技術を呼ぶ。

ホログラフィックを使った演出は人気だ。ベンチャー企業ウィンクルが家庭に置ける小さな女性ロボット「Gatebox」を発表し、三菱電機は人が通り抜けできる「空中ディスプレイ」を展示した。

 三菱電機の「空中ディスプレイ」実物展示
三菱電機の「空中ディスプレイ」実物展示

ウィンクルの「Gatebox」コンセプト映像
ウィンクルの「Gatebox」コンセプト映像

NTTも、スポーツの試合などを離れた場所でホログラフィックによって生中継できるサービス「Kirari!」を立ち上げている。

■「仮想現実」では満たせない心をとりこむ

NTTのサービスにホログラフィックを提供しているのは、東京・神楽坂にある「studioTED」。以前から女性ユニット「Perfume」やVOCALOID(ボーカロイド)「初音ミク」の公演でホログラフィック演出を担当するなどしており、目にした人もいるかもしれない。

studioTEDによると、ホログラフィックの人気はこのごろのライブイベントの好調と関係している。背景には、普及しつつある仮想現実(VR)などでも満たしきれない人の心があるという。

確かに高性能なPC、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、映像表現の優れたゲームなどの登場でVRは身近になりつつあり、娯楽は個人で完結するかと思いきや、少なからぬ人はいまだどこかに生身で集まろうとする。コンサートやミュージカルなどは活況で、むしろ技術革新によって新たな盛り上がりも見せている。

人はVRのように誰かが作った別の世界に入り込みたい気持ちと並び、今の世界にいながらこれまでの現実と異なる何かを味わい、経験を広げ、かつ同じ場所にいる誰かと共有したい気持ちがある。

つまりは拡張現実(AR)の需要に、ホログラフィックは合っている。

■原理は古く、技術は最新

注目を集めるホログラフィックだが、多くのサービス、製品が採用しているのはハーフミラー(マジックミラー)を使って光を一部素通りさせ、一部反射する方式。原理としては200年以上前からある。

studioTEDにしても20年以上も前からハーフミラーによるホログラフィックを手掛けている。とはいえ原理は同じでも技術は昔に比べ格段に進歩している。

実際「アイライナー」という人間を丸ごとホログラフィックによる効果で包めるような技術を披露してもらったが、浮かぶ映像は精細、鮮明でなめらかに動き、とても躍動感があった。

「アイライナー」による簡単なホログラフィックの例
「アイライナー」による簡単なホログラフィックの例

多彩な表現が可能だ
多彩な表現が可能だ

最近とてつもない新発明があったのではなく、ホログラフィックを支える各種の技術が地道に発展したためだとか。

具体例として映像などを制作するアプリケーションの改良、プロジェクターやメディアサーバーといった機器の性能向上、何よりそれらを駆使する人がさまざまな演出を編み出したことなどを挙げている。音響、照明の洗練も大きく寄与している。

ちなみにこうした進歩はホログラフィックに限らず、建物などに映像を投影する「プロジェクションマッピング」にも恩恵をもたらしているという。

■ブームになるのはこわい

ホログラフィックはプロジェクションマッピングのような流行になるのではないかと尋ねたところ、studioTEDは過剰にもてはやされる事態は歓迎できないという姿勢だった。

短期に盛り上がると反動としてすぐ人の関心が遠ざかる恐れがある。映像、舞台表現のひとつとして長期に持続して成長した方がビジネスとしても望ましいとの考えだ。

今後はさらに実績を重ねつつ、徐々により多くの分野にホログラフィックを広げたいとのこと。現在はサブカルチャーを中心に人気があるが、例えば日本の伝統芸能をホログラフィックで世界に発信するなどの広まり方にも期待するそう。